ひきこもりでも異世界冒険がしたい！【歌い手】

かくれんぼ ページ5

(まふまふside)


"歌い手ハウス"こと、ネット活動者達で共同で借りているこの大きな家は、管理者たる僕とそらるさん、どちらもの自宅から徒歩圏内だ。

時刻は3:50。僕はその扉の前にいた。もうそらるさんはついているだろうか。


ハウスに入る前に改めて周りを見渡す。

相変わらず街は静かだ。そして誰もいない筈なのに、煌々と明るい。

この世界は奇妙で、非日常的で、でもどこか幻想的で美しい。


これから先、何か不思議なことが起こる気がして。


僕はまるで魔法にでもかけられたように、この世界を悪くないと思い始めていた。

どこかふわふわした気分で、鍵を探すためズボンのポケットを漁る。瞬間、現実に引き戻された。


ちゃうチューる。

消えたいろはとぽてとがただの家出だったときを想定してポケットに突っ込んだものだった。

2匹はおろか、人っ子一人見当たらない。


今起こっている事の何もかも信じたくない。全部夢だと思っていたい。

理不尽な世界が嫌いだ。その思いが僕の活動の糧にもなっているんだろうけど。


ほんとは皆、僕を驚かせようと隠れているんだろう、と家を飛び出すときは思っていた。信じたかった。

きっとそらるさんも共犯で。

歌い手ハウスに着いたら皆、いろはもぽてとも、リスナーさんも、世界中の皆がわぁって飛び出す。そんな情景さえ想像していた。

でもそんな壮大なかくれんぼ、有り得ない。有り得る筈がない。


悲しさを溜息に混ぜて、ドアノブに手を掛けると、

鍵を開けてもないのにドアが開いた。

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