【文スト】助手なんていらないんじゃ…

＊18＊ ページ19

乱「君の異能で、買い物してみよう」

貴「はい？」



そう言うと乱歩さんは、自分のデスクから何やら不気味な熊っぽいぬいぐるみを取り出した。


乱「これ、家の近所の骨董屋でもらっちゃったぬいぐるみ。名前は…ええと…」


あぁ、今考えるんだ…


乱「うーん…ブルーイン君で！」

貴「ブルーイン君…？…あぁ、英語ですか」


パッチワーク生地で精一杯可愛らしく作られてはいるが、元の持ち主が少々荒く扱ったらしく、全体的に色がくすみ所々傷がついている。目も青くて大きいガラス玉で出来ているようで、不気味さに拍車がかかっている。


貴「まさか、この子を私の異能で…なんて言いませんよね…？」

乱「君は話が早くて助かるね！」



目眩がした。

こんな不気味なぬいぐるみに自我を与えるなんて。
呪いの人形に人工知能を搭載してしまうようなものだ。いや別に不吉なぬいぐるみと決まったわけでは無いのだけども。


貴「いやいやいや乱歩さん、もし万が一自我が完全に取り除けなかったらどうするんですか？確実に人挽肉職人の目で追って来ますよ」

言葉にするだけで悪寒が走った。乱歩さんだって嫌でしょう、ほらほら！

乱「絶対に大丈夫だよ！ブルーイン君にお使いに行かせたい！うああ！」

貴「ああああ、じたばたしないでください！分かりましたから！」


乱歩さんが大丈夫と言うなら100%大丈夫だ。
だがしかし、それでも不安は大きい。ぬいぐるみをお使いに行かせたいがために嘘をついている可能性だってあるのだ。それでもその場合の対処の目処は勿論立っているのだろうが…。


乱「やった！良かったねぇブルーイン君！」

私がわたわた考えていると言うのに、薄汚れたぬいぐるみを思いっきりぎゅーっとしている乱歩さん。こんな可愛い名探偵信じるしかないじゃない…


乱「ブルーイン君、これが買い物リストだよ。頑張ってきてね！」


ぬいぐるみに笑顔で紙切れを渡す乱歩さん。
私の異能により自我を与えられたぬいぐるみは、紙切れを受け取り首から下げたがま口財布に押し込んだ。動作の一挙手一投足はなんとか愛らしい範疇だ。見た目の不気味さで贔屓目にもできない。


貴「ええと…リストの駄菓子を見つけて会計して、お金を払って、駄菓子を受け取って、ここまで帰ってきてね。」

ぬいぐるみはこくりと頷いて、入り口までとてとて歩いて行った。


乱「いってらっしゃーい！」


満面の笑みでぶんぶん手を振る乱歩さん。もうどうにでもなれ。

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