恋12 遊木真side ページ13
収録が終わりほっと一息ついてると木南さんが話しかけてきた。
「遊木さん、お疲れ様です」
「おっ!お疲れ様ですっ!」
僕の言葉を聴くと「フフッ」と優しく笑う木南さん。
「あ、昔の頃キッズモデルやってましたよね」
「あ、う、うん」
あの頃の僕が懐かしいなぁ。
「でもあの頃、私好きじゃなかったです」
「え?」
「まるで中身のないお人形みたいで、輝いてるのは表面だけで」
「失礼なのは解っています」と申し訳なさそうに言う。
でも僕は確かに自分の心を押しころしてモデルをやっていた。
でもみんなが、僕の心を取り戻して命を与えてくれた。
その事を解って言ってくれてるようで。
「僕も、あの頃の自分、あんまり好きじゃなかったんです」
「今の方がのびのびしててとてもかっこいいですよ」
その言葉に僕の胸はドキッと高鳴りを感じた。
優しく笑う彼女の真っ直ぐな瞳に僕の顔は熱くなる。
こんな気持ちは初めてだった。
「じゃあまたどこかのお仕事で」
そう笑顔で去っていく。
あんな綺麗な子に微笑まれて恥ずかしくない男がいるわけないよね。
でも、これはそれだけじゃない。
胸がドキドキして苦しくて…。
この気持ちがあの気持ちなのかは解らない。
「ほとんど男子校みたいで女の子プロデューサーちゃんしかいなかったもんなぁ」
この気持ちの名前に確信を持つのはきっと遠くない話。
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作者名:歌菜子 | 作成日時:2020年4月27日 16時