【刀剣乱舞】驚きの毎日を、弐【男主】

驚きの天然 ページ30

見たことのある長い髪に、

パッと視線を上にあげる。

「おお、兼さん! 昨日ぶりだな!」

いぇーい、と両手を振って再会を喜ぶと、

兼さんもめんどくさそうにしながらも

手を振り返してくれた。

「黒鶴、この長いのは誰だ?」

記憶を全て消去した三日月は、兼さんを

長いの呼ばわりしながら挙げ句に

指をさした。

なんて礼儀のなっていない刀なんだ、

それでも天下五剣か!?

兼さんに向かってさされている指を

そっと降ろして、紹介してやる。

「和泉守兼定だ。大和守安定と

いつも一緒にいる刀だぜ」

「俺、自己紹介してなかったか?」

「兼さんは自己紹介してなかっただろ?」

物忘れの激しい兼さんは、俺の指摘に

どうだったかと頭を悩ませている。

「まぁ、悩んでも仕方ねぇか。

黒鶴、安定が呼んでるから部屋に

行ってくれ。俺は浦島に用があるから」

あっさりと考えることを放棄した兼さんは、

それだけ言ってさっさとその場から

去ってしまった。浦島って誰だよ。

安定が呼んでるっていうのも気になるが、

前田と平野の状態も気になる。

鳴狐の話だと、兄弟には何かと甘い

一期一振らしいが、今は発狂してるしなぁ。

前田たちが気づかないうちに折れてました、

なんて冗談でも笑えない。

前田たちが消えた部屋へ視線をちらちらと

向けていると、三日月が気付いた。

「どうした、黒鶴?

あの部屋が気になるのか?」

「ああ、まぁ……そう、だな。

前田と平野が、ちょっと心配なんだ」

実際はちょっとなんてレベルじゃないが、

強がって笑ってみせる。

大切な人が壊れると堪える、という

当たり前の事実に気づいた俺は、

今更ながらに誰かを失うことを

怖がっているらしい。

兼さんは浦島という人のところへ

行こうとしていた足を止めて、

俺の方を不思議そうに見る。

「別に、何も心配する必要ねぇだろ。

あの部屋の奴、抜け殻みてぇだし」

兼さんは一期一振の存在を

知っているらしく、抜け殻だから

大丈夫だと言ってきた。

兼さんたちも人のことを言えないと

いうことを、果たして本人は

自覚しているのかどうか。

三日月は『抜け殻』という言葉が

気になったらしく、

「抜け殻、ぬけがら……

その一期一振というのは、虫か何かか?」

などと、なぞの天然を発揮していた。

兼さんはツボにはまったのか

ゲラゲラ笑っている。

「…違う、一期は刀剣」

そんな三日月の天然を否定したのは、

意外な人物だった。

驚きの首落ち武者→←驚きのキャパオーバー

ラッキーカラー

あずきいろ

ラッキー方角

西 - この方角に福があるはずです

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す