高嶺の花子と大怪盗２【黒羽快斗】 (ページ50)

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100, お見事②-２ページ50

「ハハッ、お見事」

と、思わず声が漏れるが、Aには聞こえていないようだ。

  そしてその感嘆が、徐々に笑いへと変わる。

肩が震え、遂には“あっはっは”と、声に出てしまう。

  全然キッドになれてない。ほぼ黒羽快斗だ。

  『素出てるじゃん』

  と、前を向いたままのAが、バイクの音にかき消されないように声を張って言う。 

うーん、ごもっとも。

 「しょうがねぇだろ？実際めちゃくちゃ楽しいし。」  と返すが、笑いを堪えるのに一苦労。

何故なら証明されてしまったのだ。

Aの運転技術には、警察すらも敵わないことが。 

実際俺ですら、あのスピードであの角を曲がるのは不可能だ。

 地上の警察を撒いたなら、あとは頭上のヘリを撒くだけになる。

Aが何か言った気がしたが、バイクのエンジン音にかき消されて聞こえない。  

「なんて？」

   と聞き返すが、Aは俺の疑問に答える代わりに、少し緩めたスピードを上げ直す。

そして人っ子一人いない路地に入る。

この路地は、1度入ると出られなくなることで有名だ。

  迷路のように入り組んでいて、どこをどう進めば正解なのか、自分はどこから入ってきたのか、自分の居場所すら分からなくなるのがこの路地だ。  

俺一人なら、絶対に使わないこの経路。

出られなくなることが分かっている場所に、のこのこと入って行くわけがない。

だがそれを難なくこなす重度のバイクバカがAな訳で。  

バイク好きの土地勘は、やはり他よりも目を見張るものがある。

バイクと道路は引き離せないからか、Aは一度通ったことのある道は全て記憶しているし、1度地図を見れば、割とどこでも辿り着くことが出来る。 

第一Aは、この路地だって一度も迷ったことが無い。

それにはさすがの俺も敵わない。

Aの運転する隼は、右に左に、左に右にと路地をジグザグ走行。  

これで遅れてやってきたパトカー達も、迂闊に追いかけられないだろう。

  まぁ上のヘリからはバイクは丸見えなので、このヘリ達を撒かなければ意味は無いが。

  数分そうやってジグザグに進んで行くと、目的の場所が目の前に来る。  

「それではー！御機嫌よーう♡」

と、  空を見上げヘリに向かって手を振る。  聞こえてはいないだろうが、見えてはいるだろう。  