ノンフィクション。Fuma.K 2

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「じゃあ、まず自己紹介から始めよう。」

「は？」

「だって、俺たち割とお互いのこと何も知らないし。」









とりあえず日常生活に必要なものだけを取りに行って、帰ってきて一息ついた時だった。

自己紹介。

それはお互いがお互いを知るために名前から自分の好きなものや嫌いなもの、趣味特技、誕生日や出身地なんかを話すものだ。






私は、それが嫌いだった。






どうして他人に自分の事を知られないといけないのか。

名前はともかく、誕生日や出身地、好きなもの嫌いなもの。

そんなのを他人が知って、何になるんだ。

結局、第一印象で聞いた自己紹介なんて、数日後には忘れていて、仲良くなればどうでもよくなるものだ。









「必要ない。」

「どうして？」

「別に、知らなくたっていい。好きだから側にいる。それでいいの。」

「俺は嫌だよ。ちゃんとAちゃんの嫌いなものも好きなものも知っておきたい。」

「嫌だ。」









嗚呼、風磨もバカなんだ。

何も知りたくないし知って欲しくないのに、好きでいてほしいと願うひねくれた矛盾女を好きになるなんて。









「...じゃあ、俺からね？名前は菊池風磨。年齢はAちゃんのひとつ上。大学で専攻してるのは経営学。家族構成は父母妹弟。妹と弟は前話した通りね。父母は数年連絡すら取ってない。好きなことは遊ぶこと食べること。嫌いなものは嘘と束縛と嫉妬。あ、あとナス。だからご飯作る時は入れないでね。」









いじけてソファーの上で膝を折る私に体を向けて話した風磨。

嫌いな食べ物ナスって...小学生かよ。









「はい。次Aちゃんね。」

「だからっ、」

「Aちゃん、お名前言えまちゅか〜？」









意地でも言うつもりは無かったけど、そんな小さい子相手に話すような言い方。

やめて。本当に。









「...渡辺A。家族構成は父母姉弟。エリートサラリーマンの父に専業主婦の母。先輩との子供を作ってバツイチ子持ちの姉。追い込まれ 自 殺 した弟。それが私の家族。一応法学部。好きなことは特に無い。嫌いなものは嘘と煙草。食べ物ならトマト。以上。」









ほぼ一息で発した後、数秒の沈黙が訪れた。

あぁ、引かれたんだ。何一つ変哲なく過ごした私の人生は、人様に話すような物語は構成されていない。

漫画の主人公みたいなストーリーを持っている風磨とは違うんだよ。









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