嫉妬なんて似合わない ページ42
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「…こんな茶番に付き合ってられるか」
高杉さんが忌々しげに席を立った。それにブーイングを寄越すのは銀さんたち酔った人たちで、高杉さんに賛同するのは女性社員たち。
私なんかと憧れの高杉さんがキスするのなんか見たくないだろう。私だって嫌だ。
「ーーー…私、帰ります」
この数分で凄く居心地が悪くなって私は荷物をまとめようと立った。
「…送りやす、」
「え、大丈夫だよ。一人で帰れる。お酒飲んでないし」
「そういう話じゃないですぜィ」
「…何?」
立とうとして私の左手首を掴んだのは沖田くんだった。
じっと見つめられて何だかふわふわしてしまう。銀さんたちが何か言ってるのが聞こえる。…煩い。
「それとも高杉と帰るつもりですかィ?」
「何言ってんの。そんな訳ないでしょ」
「だったら俺が送りやす」
「…もっと楽しんでなよ」
ここで一緒に帰ったら最後、私は明日から会社で更に陰口を言われる運命になる。
沖田くんが善意で言ってくれてるのは分かってるのに、彼のせいにして私が結局可愛いだけの判断にほとほと愛想が尽きる。
「…俺じゃだめですかィ、?」
「沖田くん?」
急にしおらしくなっちゃって、こんなの沖田くんらしくない、なんて思ってしまう。いつもの彼に侵食されてるみたいだった。
「A、さん、」
「え、何急にどうしたの、さん付けとか明日槍でも降るの?」
いつも、お前呼びされてるから何だか新鮮。というか新鮮通り越して怖いんだけど。
「歳上と歳下、どっちが好みですかィ」
「またその質問?悪いけどそれには答えられないよ」
「…歳上が好みだから、ですかィ?」
「ーーー…沖田くん、」
「…だったら、」
そのまま掴まれていた手を引っ張られて、
気づいたら視界いっぱいに沖田くんの顔が広がっていた。
「だったら、これでどうですかィ」
「ちょ、なに、やって、!」
周りから黄色い歓声と死にそうな悲鳴が聞こえる。
「何って、キス、でさァ」
「言わなくていい、!」
「だってAさんが何やってるのって」
「煩い!!」
もう明日から会社行けないよ、と本気で覚悟してる中、
少し離れたところから高杉さんが見ていたなんて私は知らなかった。
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Hanavi(プロフ) - ありがとうございます!!!! (2019年4月30日 22時) (レス) id: 5a9b3d8683 (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - めっちゃ面白いです、これからも更新頑張ってください! (2019年4月30日 16時) (レス) id: 9b87fec193 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Hanavi | 作成日時:2019年2月11日 18時