誘惑王子57 ページ10
A「...」
自然とまぶたが降りてくる、子守歌の様な先生の声
左から右へと聞き流している...というより、聞いてないんだけど
抑揚の無く感じるその音を背景に、窓の外を眺める
...さっきの先生、どうして優しかったんだろう
真っ赤になって、慌てて俺を押し退けてくれる方が楽しいのに...
...まるで包み込むように、優しい声と力で抱きしめられちゃったんだもんね
......一瞬、よくわからなくて、
気づいた時には職員室を出ていたし
...からかってるわけじゃないけれど、失敗したのは残念だね...
このまま、可愛い可愛いこの子たちが、俺に反撃でも食らわせに来ちゃうんじゃないかって
心配になっちゃうね
......そんなの、面白く無いから嫌だけど。
...逆らえるものなら逆らってみなさい。なんて、女王様みたいな考えをよそに、自然と笑みが零れそうになる
さっきからチラチラと俺の方を見る彼らに口パクで伝えると、一瞬固まって前を向いた
うん、良い子良い子...♪
後でご褒美に何かしてあげようかな...?
そう考えたのを最後に、やっぱり寝てしまったみたい
.
A「ん...」
...何時間寝たんだろう...?
ぼんやりする意識の中、頭の重みにうっすら目を開けたら
A「...なあに...?」
零「何じゃ、もう目覚めてしまったか」
頭に置かれていた手を振り払って、身体を起こす
周りの机に置かれた制服からして、今の時間は体育なんだろうね
俺の前、泉の席に脚を組んで座る彼に問いかけた
A「何で起きてるの...?...貴方が活動するのは夜じゃないかな...?」
寝込みに現れたことに警戒しながら、不機嫌気味に問いかける
首を傾げて微笑みかけると、血色のない白く長い指を、俺の頬に擦り寄せて口を開いた
零「少しくらいなら平気じゃよ。...校舎の中なら陽も浴びなくて済む。
...それに、お主の愛らしい寝顔も拝めたことじゃしのう...?」
低く大人びた声で、絡みつくように甘く囁く
赤く滲む瞳が、うっとりと俺を映している
......やっぱり、この人の事は好きじゃないなあ
...だって、
A「ねぇ、朔間さん。...俺のこと好き...?」
俺に逆らうんだもの。
零「くく...どうした?急にそんな事を聞くなんてのう...
...言わずもがな、愛しておるよ」
そう答えたのを合図に、彼に手を伸ばした
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作者名：朝凪世一! | 作成日時：2020年5月1日 15時
