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episode 159 −やり場のない想い− ページ39

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「やっぱり、そうだったんだね。」


「……」


「……いつなの?」


「……」


「その気持ちに気づいたのは、いつ?」


「。。。。母ちゃんが死んで…
ちょっと経った頃…」


「じゃあ、あの時の喧嘩も…」


「…自分の気持ちに…気づいたんだ……
でも、だからってどうしようもなくて…
もうヤケになってた…
ケンカの相手なんて誰でもよかったんだ!
たまたまあいつらが来たってだけで……
カズを護ろうとかそんなんじゃなくて
誰でもいいから、この行き場のない気持ちを
ぶつけたかったんだよ!」


「サトシくん……」


「だって妹だぞ!!
それまで一緒に育ってきた妹だったんだよ!
…血がつながってないってわかったとしても
カズは妹なんだよ!!
どうしたって…妹なんだよ……」





無理矢理そう思い込もうとして

でもできなかったその苦しみが

痛いほど伝わってくる。


…なのにオレには

サトシくんにかける言葉が見つからない。


あの日記が見つかってからずっとそうだ。


ありきたりな言葉なんて

なんの慰めにもならない。


それがわかるだけに

なおさら何も言えなくなってしまう…








「…だから、ちょうど良かったんだ。
今度のことで、母ちゃんの言ってたことの
本当の意味がやっとわかった…
オイラはカズを護んなきゃいけない。
愛だの恋だのいってらんねーんだ。
これでやっと、吹っ切れる……」


「けど…ホントにそれでいいの?」


「……いいも何も…他に道はない、だろ?
それに、もう決めたことだ。」


「でもカズは?カズの気持ちは?」


「は?何いってんの?
あいつはショウくんが好きなんだよ。
ショウくんだってカズのことが好きなんだろ?
だからオイラはショウくんにカズのこと頼んだんだ。」


「けど…でも……」





その言葉の先は

喉元で止まったまま出てこなかった。








「ふふっ…今まで誰にもいえなかったことブチまけて
ちょっとスッキリしたよ。
ショウくんのお陰だな…ありがと。」





そう言って顔を上げたサトシくんの表情からは

何も読み取れなかった。





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作者名:folklorist | 作者ホームページ:http  
作成日時:2013年8月9日 14時

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