こはく色の縁【朱桜司】 (ページ1)

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婚約話ページ1

十年前、桜河家の座敷牢にて

『ねぇこはくちゃんきいてよ!!お母様ったらひどいのよ!私が廊下を走っただけで般若みたいな顔をして怒るの!!』

「……A姉はん、何度もゆーとるやろが、あんまりここには来たらアカンよって。見つからんかったらええとはいえ、見つかったときがまずいわ。桜河は本気でわしの存在を隠そうとしとるんやから、いくら従姉のあんたでもこう何度も座敷牢に忍び込んできとることがバレたら……あんたが今文句垂れよるようなお母はんの説教じゃすまんで」

『あら、別に会うくらいいいのにね。だって私、周りのおともだちにこはくちゃんのこと一切話してないわよ?ほんとならこんなに可愛くて、かっこよくて、私より年下なのにすごく大人っぽい自慢の幼馴染みがいるってみんなに話して回りたいくらいなのに』

私が不貞腐れた態度をとると、こはくちゃんは少し困った顔をする

こはくちゃんは大人びているし、ちゃんと怒ることのできる人だから、まわりの大人みたいに、怒鳴って私を強制的に出ていかせることもできるはずなのに

こはくちゃんは、優しい

「……まぁええわ。見つからんようにしいよ?でも、A姉はんのお父はんはともかく、お母はんはそんなことでまで怒る人やなかったはずやのにな。どないしたんやろ」

『……私ね、もうすぐ婚約させられちゃうんだって』

「……ついに来たか」

私は一応名家の令嬢の立場

だからいつかそんな日が来ることもわかっていた

こはくもそういう意味での発言だろう

「にしても時代錯誤な話やなぁ、七歳の女の子が婚約やなんて。ちなみに相手は誰なん?」

『えっと、なんだっけな……忘れた。まだあってすらないもの。でも、そのまだ見ぬ婚約者のために今からでも完璧な令嬢に、ってお父様もお母様も張り切ってるの』

「はぁ……お互い窮屈やな」

こはくちゃんは私にあわれみの目を向けた