彼岸花と君の涙。

血に染まる世界に綺麗な君は。 ページ10

〜中也side〜

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首領は先日、俺の異能力を複製し、別の者に付与すると云い出した。

確かに異能力者が1人居るだけで戦況が変わるというのは納得出来る。荒覇吐としての力を持つ俺の異能は使い勝手も良く、強いというのも理解していた。

然し、俺は其れに何処か不安を持っていた。

ただでさえ扱いに困る持て余す程の力を一般人に与えたら？どれだけの苦痛を味わうのだろうか。其奴本人の身体は保つのだろうか。

一般人を召喚したとして、血の広がる此の世界で果たして役に立つのか？人を殺せないマフィア上層部など居ない。そんな中に放り込んだとして何の役に立つ？

其の異能で反逆を起こしたら？首領に近くなるであろう其の召喚者ならば、首領を殺す位容易に出来るのではないか？

其の異能を、召喚者が俺よりも使いこなしたら？
俺よりも有能になってしまったら？
俺よりも必要な存在になってしまったら？

俺が、不要になってしまうのではないだろうか。

俺は其れが怖くて仕方が無かった。
然し首領に逆らう事など勿論出来ず、そんな哀れな考えを首領に伝える事など出来る筈も無く、ただ従うしか無かった。

最初は召喚も失敗ばかりだった。

形すらも現れることは無く、ただ派手に光るだけで成果は得られなかった。

然し首領は諦めず、研究を進めた。

回数を重ねていくごとに少しずつ生命を召喚することに成功していった。最初は確か、蛙だった。小さな雨蛙。
無論俺達に必要なのは人間だが、蛙を召喚出来たということはより強力な魂を召喚する代価…生命力を捧げれば人間も手に入ると、また研究に拍車をかけた。

日に日に捧げられる生命力…殺せば良い者達も手間をかけて生け捕りにし、其の魂を捧げていった。殺したら死ななかったであろう仲間の命もあった。研究が進むにつれてより命の消費は激しくなり、其の度に召喚されるものは変化していった。
いずれ人間も手に入るだろう。

そんな奴、来なければ良いのに。

そんな願いは虚しく、玲香Aと名乗る女が召喚された。

歳は2つ下…13だ。
15の俺が言うのも可笑しな話だが、こんな奴がポートマフィアの役に立つのか…？

然し首領は対して気にしている様子も無い。

嗚呼、遂に恐れていた事態になってしまった。

俺は此奴と共に任務を果たしていかなければならない。こうなってしまった以上、もう逃れられない。

｢分かってるね？｣

首領の其の言葉は、重く重く俺にのしかかってきた。

俺とお前の立場とは。→←不信と疑念と恐怖心と。

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