検索窓
今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:41,525 hit

124pager ページ5

大千鳥side







起きたら住み着いていた猫が死んでいた。
死因は分かっていた。

俺が殺した。絞殺したのだ。


目覚めると己の手が引っかき傷と
猫の毛が着いており、
俺の部屋には死んだ猫がいた。

………嗚呼、また殺したのか。
淡々とそう理解し、猫の亡骸を見つめる。




俺は夜間の間、無差別に命を殺すバグを持っていた。
それ故に政府に囚われ、解刀される所に
赤神に拾われた。

それ以来、赤神には世話になっているが、
本体は取り上げられ、力も削がれた。



戦場に行けぬ、死んだ刀剣。
それが、俺だった。







───────────────





昔、前の審神者からとある話を聞いた。
全ての生命が生まれるのは、生きる為である。
生きて、愛し愛され………そして死を迎え、
最後に辿り着くのは、星なのだと。

世に生きた痕跡を残し、
次へと繋げるためであると。


俺には理解できないものだった。
俺は、日本一の武士が手にした槍。
戦場でこそ、価値を見出だせる。

殺し、殺され………そして語り種を残す事。



命など、我々にはない。
我らは物なのだから。






だが、この猫はそうでない。
猫の命を断ったのは、紛れも無い俺だ。
無力で、戦う意志のない生き物を、
俺は知らぬ間に殺した。

戦場ではなく、一方的な殺戮。
それは………俺の知る戦場とは違う。


その時そう、感じた。

だから墓を作ったのは………
単なる気まぐれだった。
その気になったから、作ったまでだ。





───────────────








??『…………何、してるの』

大千「………(人間?)」









畑の片隅にて、墓穴を掘っていた時。
人間の娘に声をかけられた。

………そう言えば赤神が見習いを雇う、
と言っていたか。


夜明け色の目をした珍しい女だった。
惑わされそうな桜の香りを纏わせ、
しゃがんで掘っていた俺をじっと見てる。









大千「人間。ほう………?
そちらから仕掛けてくるとは。
わざわざ殺されに来てくれたか」









人間は、勝手だ。
バグのせいで、俺は戦場から除外された。
戦えなくなった。

戦場こそが俺を生かす場所であり、
誇りであり、俺の価値を見出だせる。


その場所を奪った人間は、
少なからず俺は憎んでいた。
人間無しでは戦場に行けない皮肉さも
憎くて仕方なかった。


何故なら、俺達を作った創造主は人間であり、
扱うのもまた人しかいないからだ。




刀剣男士として死した俺。
そんな俺に、この娘は何を語るか。

125pager→←123pager



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
77人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2021年2月27日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。