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明石「(なんで、ここに)」
『………“彼女”は言ってました。
貴方達と、過ごした日々が…………
とても、幸せだったと』
明石「(彼女………？何を言うてるんや)」
『私の事は、信じなくていい………
でも彼女の願いは。祈りはどうか』
見習いはんはそう言うて、
自分にオルゴールを手渡してきた。
差し出されたオルゴールを反射的に手に取る。
その時、オルゴールが自発的に
演奏を流し始めた。
しばらく聞いてなかった音。
少しだけ音痴な演奏。自分の手で直した箱。
明石「…………」
懐かしい記憶が自分の脳裏に流れた。
音と共に蘇る思い出。楽しかった日々。
………そうや。別に、辛い事ばかりやなかった。
楽しかったんや。ほんの少しの幸福が、
今の自分を支えていた。
自分は逃げていたんや。
明石「…………」
『明石さん………』
明石「(成程、なぁ………“あんた”、
意識があったんか。傍におってくれとったんか)」
自分の手に収まっとる小さな箱は、
旋律を奏で続けた。
こんな音していたんやな………
見えなくても分かる。
そこに、おるって事くらい。
“あなたが好き”
明石side〜end〜
───────────────
Aside
ｵﾙｺﾞｰﾙ《………明石はん》
自分だけ見えるのは、やっぱり切ないな。
目と鼻の先に彼女は居るのに、何もしてやれない。
………もどかしいな。
それでもオルゴールは穏やかに微笑みながら
明石さんの目の前に立っていた。
ｵﾙｺﾞｰﾙ《………うちは幸せやったんです。
あんな事になってしまっても………
それでも、明石はんと愛染、蛍丸が
うちの音を聞いてくれた》
オルゴールはそう言って、
嬉しそうに明石さんをそっと抱きしめていた。
やがて彼女の体は透けて、消えていく。
少し音が外れた、でも懐かしくて、
包み込んでくれるような、温かく美しい音色。
”あなたが好き“
ｵﾙｺﾞｰﾙ《誌重………》
『いくの？』
ｵﾙｺﾞｰﾙ《うちは消えない。
歌えるうちは、ここに居るよ》
『………歌えなくなっても、君は居る。
そうでしょう？』
ｵﾙｺﾞｰﾙ《！そやね………》
オルゴールはふわりと笑って、
淡い光と共に消えた。
彼女はきっと………いつまでも彼の元にいる。
いつまでも、いつまでも………寄り添って。
私の中でも彼女は生き続ける。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2021年2月27日 11時
