149pager【自鳴琴と宝石】End ページ30
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トントン
『！明石さん』
明石「………」
オルゴールが消えてから、
明石さんが私の肩を叩く。
話せない彼は、最初に声をかけた時よりも
穏やかな表情になっていた。
オルゴールの願いは、祈りは………
ちゃんと届いていたようだ。
彼は筆談で私に語りかける。
明石「【見えていたんやろ】」
『………見えてましたよ。
彼女が貴方の事を教えてくれた』
明石「【話を聞いても？】」
『勿論』
??「国行？」
『！』
その時、後ろから声がした。
振り返るとそこに居たのは蛍丸と愛染だった。
二振りは少し気まずそうに廊下の角から姿を現す。
それから、二振りは明石さんに
小さな花束を差し出す。
愛染「国行………俺達、国行が知ってる俺達じゃ
ないかも知れないけど………」
蛍丸「俺達も、国行と一緒に居たいよ。
国行が知ってる俺達と違うけど、
それでも国行が居ないと寂しい」
明石「……………。(そうやな)」
彼らはきっと、もう大丈夫だろう。
だって………優しい旋律が彼らを
見守り続けているのだから。
『………ﾊｧ』
切国「疲れたか？」
『少しだけ………切国さん、手を貸してくれて
ありがとうございました』
切国「いいや。あんたは大倶利伽羅や
歌仙が言うように、一人で無茶をするんだな」
『今回は切国さんが力を貸してくれなきゃ
きっと、オルゴールは………
明石さんに言葉を伝える事も出来なかった。
それに………切国さん、寝てないでしょう？
(記憶を失わないように……)』
切国「これくらいは慣れている。
それに………忘れたくない思い出を
日記に残す事は、嫌いじゃない」
『………そうですか』
音が聞こえる。
それは祈りの歌。安らぎの音。
相変わらず、私は神は苦手だが………
君に会えて良かったよ、オルゴール。
おやすみ。良い夢を───
───リーン──
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2021年2月27日 11時
