【刀剣乱舞】その神、縁結びを望む者

†漆佰拾伍† ページ16

そんな中、俺は初陣で
傷を負った。


嗚呼、主に勝利を贈る事も出来ないとは、
やはり自分では、主の為にはならないか。

そんな事を思いながら
本丸に帰った時………主と目があった。
つくづくついていないな。
こんな姿を見せるなんて………

いや、俺はこれくらいが丁度いいか。









夜蝶「………や、山姥切っ」









…………初めて聞いた、悲痛な声だった。
布の隙間から見た主の顔は、
珍しく顔を歪めた物で。

何故だ？俺は敗北して帰ってきた。
………こういう扱いには慣れている。
きっと直ぐに捨てられる。
そう、思っていたのに………









夜蝶「ご、めん………私の、私のせいだ！
酷いこと言ってごめん！山姥切っ！！
今傷を直すからっ！！」


切国「………あんた、何を慌てているんだ？
俺は刀だ。戦刀だ………
傷を負うのは当たり前だ」


夜蝶「でも、私の浅はかな判断で、
貴方を傷つけてしまった………
ごめん、ごめんなさいっ」









きっと……直ぐに捨てられると、思っていたのに。
初めての初陣で、傷を受けた俺の姿を見て、
血相変えた主が慣れない手つきで
俺の手入れを始める。

何故だ？何故あんたがそんな顔をする必要がある？
俺は写しだ。これでいいと言っているのに。









切国「お、い、止せ………血がつく。
俺は、血に濡れたくらいが丁度いいんだ。

戦に行くんだ、これくらいは………」


夜蝶「それでも、痛いでしょ……」









そんな顔も、出来たのか。
夜蝶は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
俺達のような類が嫌いだったのではないのか？

どうして夜蝶は………そんな悲しい顔をするんだ。
いくら考えても、その時の俺には分からなかった。



───────────────







切国「主」

夜蝶「！山姥切………もう、傷はいいの？」

切国「嗚呼、手入れが終わったからな」

夜蝶「………そう」









手入れが終わった頃にはもう夜だった。
手入れ部屋から出ると、縁側に主がいた。

まさか、ずっとここにいたのか？








切国「心配は、いらないと言っただろう」

夜蝶「でも、私のせいで………」

切国「変な奴だな。あんたのせいじゃない」


夜蝶「………ﾊｧ、駄目ね。
こう言う湿っぽい空気、嫌いなのよ。

いちいち、感傷しないようにしてたのに。
やだなぁ………」









夜蝶はそう言って、うずくまった。

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