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ｳｪﾝﾃﾞｨ「…………、」
『？ウェンディ？』
ｳｪﾝﾃﾞｨ「あ、えと………」
するとウェンディはあたりを見渡してソワソワしてた。
俺が声をかけたら恥ずかしそうにもじもじして俯く。
周囲には同じように手を繋いで帰路に向かう親子の姿が。
恋しいのだろう、親が居ないウェンディ。まだまだ幼い。
親子のそれを見て、羨ましく思ったのかも知れない。
『手、繋ぎたいのか？』
ｳｪﾝﾃﾞｨ「へっ！？いや全然！そ、そんな事は………」
『………ほら』
ｳｪﾝﾃﾞｨ「！で、でもAさん、片腕が………」
『いいんだよ。荷物は肩にかけれるから。
ほら、子供は甘えるものだよ』
俺はウェンディに手を伸ばした。
ウェンディは最初遠慮がちにしてたが、
やがて俺のボロボロの手に、自分の手を乗せて繋いでくれる。
『さぁ、帰ろう』
ｳｪﾝﾃﾞｨ「………えへへ………ありがとうございます。
はい、帰りましょう」
小さくて、温かい手だった。
ウェンディは嬉しそうに俺の手を握ってくれ、
ニコニコと笑顔で俺に話しかけてくれる。
シャルルは呆れ顔をしながらも、
ウェンディのその様子に、俺と同じく口を綻ばせていた。
なんと愛しい時間だろう………
いつまでもこんな日々が、続けばいいのに。
─────────────────────
『嫌だ、嫌だぁぁあ！！う"わ"ァァアア"！！？』
絶叫する、自身の声がした。
精神が、崩壊する音がする。
嗚呼いかん。昔の事を思い出すと、こうして走馬灯として
夢にまで現れては、俺を蝕んでいた。
何度、脳裏に過っただろう。
ディオーレが死ぬ姿を、何度も、何度も。
世界で一番好きだった人だった。
世界で一番、愛して、共に生きたいと願った。
俺のたった一つの、大切な人。
その人が、死んだ。魔竜、アクノロギアの手によって。
………いや。本当は俺がディオーレを殺したんだ。
俺が彼を死に追いやった。
俺を助けるためにディオーレは、俺を庇って──
『ディオーレ！！ディオーレぇぇ！！！！』
《…………A、》
最期のディオーレは、なんて言ってたっけ。
俺を見て、長い尾で俺の頬を撫でて。
翼で大切そうに俺を包んでくれて。
優しく、優しく笑っていたような気がする。
《ごめん、なぁ………》
謝るべきだったのは、俺だったのに。
彼は謝罪と感謝の言葉だけ残し、事切れた。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2024年3月4日 0時
