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ギルダ「ナツ、後で俺ん家来い。土産だぞぉー?
あ、その前にAー!
例の件の話がある、来てくれー!」
『………へいへい。例の件、例の件ねー』
“例の件”なんて言ったが、
実際の所、二人きりで話す口実が欲しかっただけどろうに。
と、もっとなんか無かったのかと内心突っ込みながら、
ギルダーツの後を追う。
歩を進めていたギルダーツの先にあったのは、
出入り口である門扉ではなく横側の壁で、
ギルダーツが通れるサイズの穴を作り出し、
作った本人は全く気にせずそのまま歩いて行った。
背後で何人か何か言ってたが、
聞こえないふりしてギルダーツの後ろをついて行った。
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『………皆の前で倒れなかったのは褒めてやろうか』
ギルダ「!!痛ってぇな!も、もっと優しくしてくれって」
『俺みたいな奴に手を出そうとする変態は
お前くらいだろーな』
ギルダ「いやお前って幾らでも触らせてくれんじゃん」
『聞けば聞くほどのクズっぷりだなおい』
ギルドから少し離れた場所まで来ると、
ギルダーツはフラリと体を傾いだ。
俺が支えた時、左腕が無いことに気づいた。
そのまま何も言わず、ギルダーツを支えながら歩けば
彼は俺の体をサワサワと触ってきたが、無視する。
『俺の体一つで、仲間が癒やされるなら別に
触られたってどうってことは無い。家族だからな』
ギルダ「いてぇ、良心痛くなる攻撃やめろぉ」
『悪い事は自覚してるんだなオッサン』
ギルダ「うわ、相変わらずだな。つかお前に言われたかねぇ」
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ギルダ「………ふぅ」
ギルダーツの自宅まで付き合って、
部屋に入って直ぐの椅子に、ギルダーツを座らせると、
ギルダーツは心底疲れたように天井を仰ぎながら
深く、深く息をついた。
『………左半身ごっそりやられたってわけか。よく生きてたな』
ギルダ「、………へへ、自分でも思うぜ」
『痛むのかい』
ギルダ「嗚呼………傷はだいぶ塞がったがな。
無理すりゃ血もまだ出る」
『阿呆め、せめて血が出なくなるまでは
療養すりゃいいものを………』
ギルダ「そうはいかねぇ。もうすぐS級試験だろ」
『あー、なるほどな』
俺はパチンッと指を鳴らし、
換装魔法で塗り薬が入った丸い薬入れを取り出し、
ギルダーツに差し出す。
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2024年3月4日 0時