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佰肆拾弐日 正風 ページ19











『今日も駄目だったか………』








ここは煉獄家。
定期連絡の為に煉獄殿の屋敷に訪れたのだが、
追い出されてしまった。

呆然としながら、私は煉獄家の正門の前に立ち尽くす。











『………紅焔(こうえん)、ごめんよ。今日も駄目だった』


紅焔《ワタシモ、役二立テズゴメンナサイ》











私達は私の肩に止まっている、
煉獄殿の鎹鴉である“紅焔”に謝罪すると、
紅焔は項垂れるように頭を下げている。

紅焔は良く働いてくれていた鎹鴉だが、
煉獄殿がああなってしまってからは、
己の役目を果たそうと、定期的に私の下に現れては
任務を欲しがってくるようになった。


この子なりに、彼を励ましたかったのだろう。
しかし、以前は羽を打たれて痛めてしまってから
上手く羽を動かすことが出来なくなってしまっている。

それでも羽を動かして賢明に私の屋敷まで
やって来るものだから、その健気な姿を見る度に心を痛めた。











『紅焔、君はよく働いてくれているが、
休まなければ羽を駄目にしてしまうよ?』


紅焔《ワタシハ槇寿郎ノ………相棒。相棒ォー!
頑張ル!マダ飛ベルー!カァー!》


『いてて、分かった分かった!耳を引っ張るんじゃない。
しかしどうしたものかな………
槇寿郎殿は任務を放棄してるわけでもないが、
ここまで妥協するような事があれば流石に………』










「む、貴方は!風柱・小鳥遊殿か!!」











紅焔に耳を摘まれていると、
背後からそんなハキハキした声がよく通った。
振り向けば、そこには煉獄殿とよく似た少年が、
竹刀を背に背負い、その場に立っていた。

ご子息の………杏寿郎殿だ。










『杏寿郎殿か。こんにちは』

杏寿「こんにちは!!!!!」

『息災かな』

杏寿「はい!!出稽古の帰りです!!!」

『そうか。精が出るね』

杏寿「小鳥遊殿はうちに何か用が!?」


『うーん。用は一応終わったかな?(追い出されただけだが)』

杏寿「…………そうですか!」










杏寿郎殿は明るく振る舞ったが、
どうして私がここに立ち尽くしているのか察したのだろう。
僅かに心情に揺れがあった。

傷つくかと思って、一応やんわりと答えたつもりだったが、
元気のない紅焔を見て悟ったか。

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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時

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