◆幾度目かの死◆ ページ43
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四十ほど死んだ時だった。
その時の私は、まだ自我は無く、
人の血をすすっていた。
本能のままに、喰って、喰って、食い続けていた。
でも、その時に乗っ取っていた体は、
小さな体だったような気がする。十にも満たない少年の体だった。
今思うと吐き気が出る話だが、
そんなこと、気に求めなかった。
それが何よりもつらいものだった。
生前は、心優しい少年だったようだ。妹も居た。
だが、眼の前で無惨に妹と両親を殺された。
そして鬼となって、家族を食った。
あれほど、愛していた家族でさえも、
鬼となれば食ってしまう。
その少年の鬼が死に、私が乗っ取った後でも
本能のままに人を食ってしまったことが悔いてやまない。
これほど小さい子供も、
あの世では地獄行きとなってしまうのだろうか。
健やかに生きていた。
守るべき子供が、人を殺して、喰らうなど。
あってはならないことなのに。
そして、その少年の体を乗っ取っていた私は、
当時の鬼狩りに殺された。
鬼狩りは子供に対しても容赦なかった。
「お前達さえ居なければ」と罵倒し、怒号をあげながら、
この少年を嬲り殺し、苦しませ苦しませ、頸を跳ねた。
その時だけは、中身が私であってよかったと思った。
だが………私に乗っ取られる前にも、
同じように首を斬られていたなら………
嗚呼、そう思うだけでも苦しい。
どうか、どうかこの子の魂が………
地獄に逝ったとしても、救われますように。
罪が許され、転生が出来るのであれば。
どうか、光あふれる優しい世界で、生きていけますように。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2023年4月18日 21時
