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「……宮くん、案外律儀なのかな」



ぽつり、と私の声が私の部屋に静かに落ちていった。誰に聞かせるでもない独り言だ。ただその声が私の口から出て、耳に届いて、そして脳がその言葉を改めて咀嚼した。宮くんは、律儀なのだ。恐らく。私の視線はスマホの画面に釘付けられたまま、ため息だけが知らず知らずのうちに口から漏れた。


画面は緑アイコンのSNSの、宮くんとの会話を表示し続けている。暗い部屋の中で白く光る画面に映る、さっきまでの短い会話をもう一度目でなぞった。


追加してきたのは向こうから。正直驚いた。そして直ぐに思いついたのは、直接ではなくスマホ上で謝るつもりなのだろうか、ということだった。ああ、それは考えてなかった、それをされたらこの行動もおしまいだね。ぼんやりとそんなことを考えていたけれど、結局あては外れていた。




追加しといたわ。よろしく
Aあ、忘れてたごめんね。よろしく!
別に気にせんでええよ
Aありがとう



何でわざわざ友達追加なんてしたんだろう。増えていく会話を見ながらぼんやりと思っていると、また会話が追加される。



なあ、明日さ




あ、決着ついちゃうのか。早いなあ。



昼一緒に食わん?



「えぇ…………」



何を考えているのだろう。私としてはこの偽物のお付き合いが続くのは願ったり叶ったりだけれど、向こうはさっさと切り上げたいだろうに。




Aうん、宮くんがいいなら
俺から誘っとるのに悪いとかあるわけないやん
人目に付くのが嫌なら空き教室で食べよか
Aうん!




向こうが何を考えているのかさっぱりわからない。本当に、わからない。明日伝えたいのなら、別にご飯を食べる必要は無いのに。でも好都合でもある。
私があまり目立ちたくないと言った所為で、彼と関わる機会は今のところ付き合う前とあまり変わってはいなかった。これじゃあ無効に私のことを知ってもらうことも出来ない。これはチャンスだ。でも、それにしても。



「……律儀だねえ、宮くん」




てっきり私は本当に、画面越しに文字で謝られておしまいになるのかと思ったのに。彼はそんなことをするつもりは無いらしい。


「ごめんね宮くん」







その律儀さに見合うような、優しい女の子じゃなくてごめんね。
 
 
 
 

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えま(プロフ) - せなけいこさん» そこまで言っていただけてただただ感謝です!! ありがとうございます!! (2020年10月3日 15時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
せなけいこ - 星の数が足りません!めっちゃ好きです!! (2020年10月3日 14時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - おかか。ですか?さん» ありがとうございます!! 作品を楽しんで頂けたようで幸いです!! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか? - 私の語彙力がないせいで言い表せないんですけど、めっちゃ面白かったです!最高でした!! (2020年9月7日 17時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - せりなさん» 天才だなんて!! 身に余る言葉です、ありがとうございます!! (2020年5月13日 5時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えま | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年4月24日 17時

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