十六話 ページ17
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夜、薩摩との同行を終えた千景は里に戻っていた。
千景が門の砦を潜り、屋敷へ向かっていると、
民『千景様、』
千景を見かけた民が話しかけてきたのだ。
千景『どうした?』
千景がそう問うと、
民『A様はご無事なのですか?』
Aが新選組の手に渡ったことは民にまで知られ
ていた。千景は驚いた。民は泣いていたのだ。ここま
でAは愛されているのだ。そんな民を見た千景
は、
千景『案ずるな。我が妻は必ずこの俺が連れ戻す』
千景がそういうと、民は一気に笑顔になり
民『本当ですか!千景様がそうおっしゃって下さるな
らとても心強いです!
我ら里の者もA様の帰りを待っておりま
す。なにかお力になれることができればなんなり
と申し付けください!』
千景はそんな民の言葉を聞いて、とても優しげな笑み
を浮かべた。
千景『すまんな。お前たちには苦労をかける』
そして千景は民と別れた。
千景は部屋に入り食事をしていた。
いつもなら隣にいるはずの妻がいない。この時千景は
Aがどれほど自分の心の拠り所になっていたか
を身をもって感じていた。ーーーーーーーー
天霧『風間、戻っていたのですか』
天霧が部屋へ入ってきた。
千景『Aの状況は把握できたか?』
天霧『申し訳ございません。手は尽くしているのです
が』
その刹那ーーーーー
ガシャン!!!
千景は手に持っていた、酒が入っていた盃を勢いよく
放り投げた。
千景『Aが酌をしない酒は反吐が出るほど不味
い』
そう言って千景は、チッと軽く舌打ちをした。
天霧『、、、、』
そんな千景を天霧は黙って見ることしかできなかっ
た。重い沈黙が続く中、先に口を開いたのは千景で
あった。
千景『先程、民と約束してきたのだ。
Aを必ず救い出すと。彼奴は民の信頼が
非常に厚くてな。
あの時、民は涙を流していた。それを見て俺は
Aを救うことと同時に、この里、民をも
守らねばとも思ったのだ。
俺がここまで情に揺さぶられるとはな。』
千景はそう言って、軽く笑ってみせた。
そんな千景の言葉を聞いた天霧は
天霧『里を治める頭領として良いお心構えです。
そのお気持ちこそこの里の統率をより良いもの
としていくでしょう』
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作者名:永舞 | 作成日時:2020年12月31日 20時