2.出逢い ページ4
｢このままだと君、僕と婚姻は疎か、家との関係の一切が消されるよ｣
｢うん……ああいや、はい、うん……なんでこう、人権を危ぶむ強行を｣
動揺で思わず敬語が飛んで行く。大体、この人と婚姻関係を結んだところで意味ないんじゃ……？
｢いや、マフィアじゃないですか｣
｢だから本家へ直談判しに行くんだよ｣
そうだった。今さっき見せられた指輪は世界の有力組織であるボンゴレのもの、らしい。恭弥さんが私に嘘を着く利点と言うのも思い付かない。嘘ではないだろう。
私の家族の強行虚しく更に上の危険へ突っ込ませていることになるのだ。
｢恭弥さんは婚姻自体に抵抗ないんですか｣
｢見知らぬ人間を宛てがわれるよりマシ。君は僕の個人的なことに口出ししないでしょ｣
私以外でもあなたへ口出すことは無いと思いますよ。という言葉は飲み込む。
結局のところ、万が一何かあった時に逃げ込めるのはこの人の場所だけなのだ。下手に自分の逃げ口を失うようなことは言わないでおこう、という魂胆である。
私の隣で小さく欠伸をした後船を漕ぎ始める彼はもう少し月日が経てば十八になる。長いまつ毛を伏せているとまだあどけない顔に思うが、切れ長の目は大抵いつも大人びていて、他人を苦手だと言う割にはよく見ている。
五月の上旬、まだ少し冷える気候にくしゃみをする彼。部屋にあったブランケットをかけて、机の上に置きっぱなしの指輪を恭弥さんの手につける。
｢ちゃんと持ってなきゃダメですよ｣
たぶんもう聞こえてないであろうが思わず言ってしまう。
持っていた書類を引き出しにしまい、鍵をかけようとするも彼のポケットに入っているであろうことに気付く。
気は引けるがここで起こすこともあまりしたくないため、恐る恐る手を伸ばして彼の制服のポケットに触れる。
あった。
あとは取るだけ。チラ、と彼の顔を窺うとバッチリ目が合う。機敏に動いて飛び退いた私を見て、猫みたいだね、と眠そうにもにょもにょ口を動かしている。
｢起こしましたか｣
｢そりゃ、これだけ近付かれれば｣
｢私より恭弥さんの方がよっぽど猫みたいです｣
ドクドクと鳴る心臓がうるさい。命の危機を感じた人間とは意外に冷静になれるものだ。
鍵、と投げ渡しそのままさっきまで私の居た場所も使って寝転ぶ。恭弥さんのしなやかな動きは本当に猫みたいだといつも思う。丸くなりながらブランケットを被る彼に風邪ひかないでくださいね、と一言声をかけ引き出しを施錠し退室する。
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さとう(プロフ) - コメント失礼します。とっても面白くて何回も読み返してしまいます！夢主ちゃんと雲雀さんの歪な関係がとてもグッときます。影ながらいつも応援しております。更新無理せず頑張ってください！ (2019年6月18日 23時) (
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作者名：銀竹 | 作成日時：2019年5月28日 20時
