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ep356 ページ9

乾いた砂を踏み締めるようにして宇宙艇から降りる。辺りを見回せば「……殺風景」とそんな言葉がこぼれた。


ふと後ろの怪我人が無事に降りられるか不安になって振り向くが、外套を翻しながら颯爽と降り立つ姿にそれは杞憂らしいと分かる。

怪我人じゃないな、“元”怪我人。今じゃすっかり全快の。


しかもこちらの存在などまるで意に介さず先へと進んでいく。眼も合わせないまま何処かを目指して歩くあの様子からして、すっかり何かのスイッチが切り替わったみたいだ。

たぶん今あの団長の頭の中にあるのは目の前の存在が獲物か、獲物との勝負を邪魔する奴か、それ以外のどうでもいい奴かの3択。


正直、肌が粟立ちそうなほどの緊張感を漂わせている彼について行くのは綱渡りだけれど仕方ない。

どうにもきな臭い烙陽の空気……勘違いじゃなければ敵も既にここを嗅ぎつけている。

辰馬には格好つけて「待ってるよ」なんて言ったけれど平和な再会にはならなさそうだ。



なんて考えているうちに既に置いていかれそうになっている。

慌てて先行く背中を追いかけた。




 




その先で辿り着いたのは一つの石碑。


それをじっと見つめる団長を私は少し離れた木の陰から窺い見ていた。

石碑が見えた瞬間、そこに供えられた花と当初から感じていた違和感の答えが繋がって……
私はそれ以上、石碑に近づいてはいけないような気がして立ち止まった。


それは私が家族という存在と希薄な人生を歩んできたせいでこういう時の模範解答な言動もわからなければ、それをしてみたところで団長は嫌がるだろうという漫然とした確信があったからだ。


何故かあの夜兎家族の口から出ない“母”の存在。

ずっと何処かで引っ掛かっていたし予想もしていたけれど、目の前でその答え合わせをされるのはあまりにも居た堪れなかった。


あの時、団長がここまでの道順を“覚えている”と言った理由が今ならわかる。そしてここを離れた理由も——。

やはりここは神楽ちゃんと団長の生まれ育った場所なのだ。


そんなところにある石碑。そして洒落た花屋なんて無いこの星で、供えられているまだ新しい花。ここへ一足先に来てそれを供えていった人物にも見当がつく。



宇宙艇を降りた時に垣間見た団長のあの凍えるような眼。あの石碑には一体どんな視線を注いでいるんだろう。


“団長”ではなく“神威”という1人の個としての領域に踏み入れてしまったことに戸惑いを感じて


私はその場を離れた。



 

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ギラッフェ(プロフ) - 陽-hisa-さん» いつも楽しみにしてくださってありがとうございます。何よりもの励みになっています!今後とも楽しんでいただけると嬉しいです(^^) (9月2日 0時) (レス) id: 7a3023c2c7 (このIDを非表示/違反報告)
陽-hisa- - お久しぶりです。攘夷とこんなに上手く絡ませている作品、やはり私的にはこの作品が一番です。一番好きです。これからも楽しみにしています。応援しています。 (8月31日 19時) (レス) id: cd440b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - るぅさん» いつもありがとうございます!ベタ褒めしていただいて嬉しい限りです笑 今後ともよろしくお願いします! (8月22日 9時) (レス) id: 1bbdb8d99e (このIDを非表示/違反報告)
るぅ - いつも読ませて頂いてます!大体どの作品も恋愛系の作品が多いのですが、占ツクで面白い作品に出会えると思ってなかったです笑コメント見させて頂きましたが、オチなしの結末を考えているとの事で個人的にホッとしました笑これからも応援してます! (8月21日 21時) (レス) @page48 id: 0469468a88 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひーさん» コメントありがとうございます!読み返してくださるのとても嬉しいです!今後ともよろしくお願いします! (8月10日 9時) (レス) id: da4440489d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2022年1月26日 0時

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