【銀魂】前職：攘夷四天王専属参謀 捌

ep376 ページ29

ははは、と戦場に似合わず、楽しげに笑って見せる参謀にやれやれと溜息もちらほら。


当の本人は水を得た魚のように戦場の布陣を綿密に整えていく。


「武市さん、鬼兵隊の半分を手薄になる南の方に回せますか？」

「えぇ、そうしましょう」


「陸奥！アイツらの後援頼む」

「任せろ。阿保の尻拭いは慣れちょる」




そしてそれぞれの場に散った戦力を見下ろし、戦場に目を走らせ、脳を回す。



そこへ————




ザザッ……。

砂を踏み締める足音。


振り返れば、武器を携えた天人達が好機とばかりにAの背後を取り囲んでいた。


「あれ、話し相手になってくれる感じ？いいね、陣形も整って暇してたところだよ」


「橘さん！」

わざとけしかけるようなことを言う彼女に、武市が冷や汗を流す。
だがAは


「大丈夫ですから。貴方は鬼兵隊の指揮をお願いします」


はよ行けとばかりに掌をひらひらさせて適当にあしらった。



そして敵はAへと照準を定めながら言う。

「お前があの人間達の司令塔だろ？つまりお前を殺せば戦場で頭を失ったアイツらに勝ち目はねぇって訳だ」


Aは敵の言い分を大人しく聞いていたが、しばらく黙っていたかと思うと「はぁ〜…」と盛大な溜息をついた。



「私がアイツらの司令塔……ふぅーん、そう見えた？」


腰に手を当て、余裕綽々の参謀に動揺するのは敵の方だった。


「だったらアレは何なのかねぇ？」


彼女が指差す先には追加で投下された敵戦機2機を血眼で獲り合う銀時と高杉。



《……ねぇ銀時さん銀時さん。私その2機は晋助に任せるって言わなかった？》

《こっちだって身体鈍ってんだよ。両方ともボンボンにくれてやる義理はねぇ！》


《……本音は？》

《高杉が俺より活躍すんのヤダ》

《ガキか》





Aは呆れたとばかりに首を横に振った。そして自分を取り囲む敵に向き直る。



「で、君達はこれを見て私が司令塔だと思ったと……。悪いけどそれは盛大な勘違いだ。
アイツらは誰の命令にも指図にも従わない。アイツらを動かせるのはアイツら自身だけだよ」


そのせいで毎回苦労させられてるのは確かに私だけど…とぼやいた参謀はそう言うわりには満更でもない顔をしていた。



　

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