ep350 ページ3
—no side—
ひたり、ひたりと頰に冷たい感触を感じていた神威はうっすらと瞼を押し上げる。
すると横で「あ、起きた」と鼓膜を揺らす声。
あまりに近かったその声に驚いて、ほぼ条件反射で拳が出た。
だが声の主を狙ったはずのその拳は紙一重で躱され、その先の宇宙艇の操作盤へと向かう。
「ちょ、待っ——!」
慌てたその声にやっと寝惚けた頭が回り始めて拳を緩めるが、時すでに遅し。操作盤は粉々に砕け散った。
隣で頭を抱えている姿が目に入るが、当の神威は自分の拳が掠りもしなかったことに違和感を感じて黙り込む。
「寝汗拭いてただけじゃん。よりによって座標システムを壊すなよ、座標システムを……」
不快感満載で眉間に皺を寄せるA。
やっと現状を把握した神威は、丁寧に手当てされた自分の身体と隣の操縦席に座るAとを交互に見つめる。
「……難癖つけないでね。貴重な重要参考人死なせたくなくてやっただけだから」
こちらを一瞥もしない彼女は「こうなったらアナログに頼るしかないか」と呟きながら地図を開く。
小難しい顔をしながら宇宙艇の外と地図を見比べるAにつられて神威も外を眺める。
すると南天楼付近の衛星から既に遠く離れた所に来ていることに気づいた。
「……俺どれくらい寝てた?」
「1日半。乗り込むなり気絶してたよ」
思い返せば、ろくな手当もせず水も食料も無い状況で衛星に潜伏していたのだから当たり前だと神威は胸中で納得する。
そしてそれと同時に関心はAに向かった。
「ねぇ、お姉さんなんで
「真選組は国とドンパチやったら取り潰しにされたんだよ。たぶん黒幕は君達を襲撃した奴等と同じ」
そう言いながらもやはり目は合わない。
「それで俺達を探してたってことか」
「そういうこと」
やけにあっさりと事情を明かすAに調子が狂っていた次の瞬間……
彼女は今までの様相がまるで嘘のように表情を一変させ、
射抜くような眼差しで神威に尋ねた。
「で、晋助はどこ?」
濁流が渦巻くような眼と、答えによっては息の根を止められそうな緊張感。
神威はなるほど、実のところ1番聞きたかったのはそれか、と納得しながら
針の筵のようなその空気にどこか胸を躍らせていた。
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ギラッフェ(プロフ) - 陽-hisa-さん» いつも楽しみにしてくださってありがとうございます。何よりもの励みになっています!今後とも楽しんでいただけると嬉しいです(^^) (9月2日 0時) (レス) id: 7a3023c2c7 (このIDを非表示/違反報告)
陽-hisa- - お久しぶりです。攘夷とこんなに上手く絡ませている作品、やはり私的にはこの作品が一番です。一番好きです。これからも楽しみにしています。応援しています。 (8月31日 19時) (レス) id: cd440b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - るぅさん» いつもありがとうございます!ベタ褒めしていただいて嬉しい限りです笑 今後ともよろしくお願いします! (8月22日 9時) (レス) id: 1bbdb8d99e (このIDを非表示/違反報告)
るぅ - いつも読ませて頂いてます!大体どの作品も恋愛系の作品が多いのですが、占ツクで面白い作品に出会えると思ってなかったです笑コメント見させて頂きましたが、オチなしの結末を考えているとの事で個人的にホッとしました笑これからも応援してます! (8月21日 21時) (レス) @page48 id: 0469468a88 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひーさん» コメントありがとうございます!読み返してくださるのとても嬉しいです!今後ともよろしくお願いします! (8月10日 9時) (レス) id: da4440489d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2022年1月26日 0時