ep307 ページ10
「……成る程、それでこの配属ですか」
納得してくれたらしい佐々木局長は静かに紙を仕舞い込む。
「ということは起爆剤は土方さんですか……」
そして食べ終えてから箸を置き、そう言った。
だが私は「いいや、違うでしょうね」と笑う。
あの人はなんだかんだ言いながらも結局大人しく受け入れてしまうタチだからな……。
熱血漢なようで意外に予想不能の展開や現実に対して弱いというか淡白というか……。
「だとしたら誰が発端になるんです?」
「さぁ、そんなの知りませんよ」
彼の問いに私は肩をすくめて見せる。
「分かりやすく言えば演劇なんですよ」
舞台と脚本はこちらが整える。でも実際そこで動くのは私達ではなく、彼等だ。
勿論アドリブや不測の事態だって起こりうる。むしろそれが現実だ。
「予定調和なんて狙えませんよ、神様じゃあるまいし」
「それで万が一、何も起こらなかったらどうするんです?」
「……その時は発破でもかけてやればいいんじゃないですか?それも考えてありますから心配無用です」
それだけ言って私は残っていた蕎麦を取り、つるりと飲み込んだ。
「本当に躊躇がありませんね」
「えぇ、まぁ。副長さんに嫌われてる分、局長さんの信頼は得ておかないとですから」
食後のお茶を飲みながら苦笑いすれば
「寧ろあの場では貴女を信じる人間など片手に収まるくらいしかいませんよ」
と返される始末。
「そうですか……」と湯呑みを置いて一息つく。そしてさっきから癖のように貼り付いた苦笑いを引き剥がして尋ねた。
「因みにその“片手”の中に佐々木局長は入っていますか……?」
そう問われた彼の視線は机上から私へと移動する。
「どういう意味ですか」
「いえ、ただ私が貴方だったらそうはいかないなと思っただけですよ。それに私自身少し不安もありまして……。あの日、貴方が話したことは全て事実なのかどうか」
途方に暮れていた私に参謀依頼をしたあの日、佐々木局長の真の目的を知った。
それを聞いて自ずと辻褄の合う出来事の数々に納得はしたもののそれが全て事実という保証なんかどこにもない。
「それに……件の見廻組副長さん、元奈落ですよね?」
その言葉で、今まで波一つ立たなかった雰囲気に少し気色ばんだような熱を感じた。
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時