検索窓
今日:16 hit、昨日:49 hit、合計:231,385 hit

ep344 ページ47

—no side—


執拗な奈落の砲撃を掻い潜り、戦線を離脱した真選組らの船。

熾烈な戦いの末手に入れた静けさを感じつつ、信女は朝陽を浴びて水平線の先を眺めていた。


白と黒の入り混じった隊列が船首に集まる中、その合間を白い紙吹雪が駆け抜けていく。


振り返った隊士達の視界に入ったのはフードを深く被った参謀の姿。


彼女は痛む脇腹を押さえながら、それでもゆっくりと船首に向かって歩き出した。


途中でフードが風にさらわれても

泣き腫らした瞼と痛みに歪む表情があらわになっても

それを隠す素振りも見せずに歩き続けた。



もう無駄な足掻きもしなければ格好もつけない。無様だろうがなんだろうが曝け出す——。


そんな気概さえ感じさせる姿に隊士達は一人、また一人と彼女に道を開けた。



そして船首に辿り着いたAは信女の隣に立って同じように水平線の先を眩しそうに見つめる。



「あの手紙、なぜ破り捨てたの」

「見てろよって宣戦布告」


尋ねた信女に少し微笑みながら返したAは、意地悪く書いてあった佐々木の追伸を思い出していた。



“信女さんに手紙ですか?必要ありませんね。貴女と違って彼女はエリートですから”

“それに——……
彼女には既にとっておきの名前(てがみ)を渡しましたから”



「それがちゃんと伝わってるのが悔しいところだね」



Aは信女の携帯を眺め、


『異三郎
素敵な名前をくれてありがとうだお』


液晶に映るその言葉に頰を綻ばせる。






次の瞬間、信女が思い切り良く携帯を空へと放った。




「長官殿に敬礼——!!」


それと同時に一斉に隊列が整う。







少し離れたところでその様子を見ていた銀時と桂は安堵したように目を合わせていた。


「Aさん、大丈夫そうですね」


そう言う新八に「まあ、元々あいつは強ぇからな」と笑う銀時。


「どれほど他人の死を目の当たりにしようともその一人一人を愚直に悼む。
そういう感覚が麻痺してもおかしくない場所に身を置いても決して揺るがないな、昔から」


そう語る桂はいささか誇らしげな様子だった。



「柔くて強くて綺麗で……その分、傷が付きやすい。そういう奴だ」



2人の視線の先にいるAは依然として船の行く先をじっと見据えていた。



 

ep345→←ep343



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (546 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
838人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 原作沿い , 真選組
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。