ep328 ページ31
正直、見廻組局長と副長が揃って音信不通になるなんて考えてなかった。
果たしてこんな状況で私が役に立つのかは我ながら疑問だ。
参謀の役割は常に情報を収集し、すぐさま最善の策を立案すること。つまり情報が武器なのだ。
なのに今、私は砲撃で最前線から離れてしまった挙句、情報を得る手段がない。せめてトランシーバーかインカムがどちらかだけでも生きていれば良かったのに——
……まぁ、今更それを言っても後の祭りだけれど。
仕方なく、私は走り続けながら現状を整理し始める。
トランシーバーから神楽ちゃんの声がしたということは恐らくまだ信女ちゃんは崖側にいる。
そしてあちらで何か不測の事態が起こったことは確実だろうがそれが何かわからない。
でもあの彼女が撤退しろと言ったんだ。状況としては芳しくない。
挙げ句の果てにさっきから次々と降ってくる奈落部隊の砲撃——。
やはり彼女のいう通り、離脱を最優先にしよう。
その結論に達したとき、ちょうど左側の道から
「どけェェェェエエエ!!!!」
威勢のいい怒号が聞こえてきた。
副長達だ——。ヅラもいる……
だがその面々を凝視して気づく。
その群衆の中にいるべき筈の人物がいないことに。
「副長ッ!」
「橘…!オメェらも無事だったか」
「近藤局長はどうしたんです!?」
目の色を変えて尋ねた私に副長は目を伏せる。
「この砲撃ではぐれちまった。近藤さんだけじゃねぇ、みんな散り散りだ」
おいおい嘘だろ。近藤局長を取り戻すための戦いでどうしてその局長を見失うって言うんだ…
「……すまねぇ」
そう項垂れる副長を見て、真選組の隊士達は我慢ならなかったのか激昂して叫んだ。
「なぜ謝るんですか!?元はと言えば橘参謀が見廻組に寝返ってこんな作戦立てたから局長は殺されかけて!真選組は解散する羽目になったんじゃないですかッ!!」
その言葉に目を丸くして私を見る副長。
「説明してねぇのか?」
「え?あ、まぁ……そんな時間なかったですし。
むしろ私をダシにした方がみんなお尻に火がついて頑張ってくれるかなぁとか思いまして……あはは」
「あははじゃねぇ。ったく、相変わらずオメェは……」
そんな私達のやりとりに疑問符を浮かべる隊士達。
「……どういうことですか」
「どうもこうもねぇよ。コイツは敵じゃねぇ」
そう断言する副長の言葉に、無意識の内に背負い込んでいたものが心なしか軽くなったような気がした。
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時