ep308 ページ11
権力者に付く利点は正直これだ。
幸いなことに現時点、私は新旧警察庁長官に雇われているわけで、普通なら得られない筈の情報を入手できる。
それこそ巷で言う“極秘”的扱いのものも含めて。
今回、一橋側の見廻組に付いたことで今までは知る由もなかった天導衆についての情報もいくつか手に入れられた。
勿論、私なんかじゃアクセスできないものもごまんと存在したけれど。
しかしその中でも印象的だったのが今井信女と名乗る彼女の出自だった。
「彼女の古巣は天導衆傘下の天照院奈落。かつて貴方が言っていた“殺しのエリート”もあながち嘘ではないどころか寧ろ事実ですね」
ゆっくりと脚を組み替えて佐々木局長の様子を窺うが、視線をこちらに注いだまま何か言う素振りも見せない。
「……これは私の悪い癖ですが一度気になるとなかなか諦めがつかないタチで。そんな彼女と貴方がどう出会ったのか気になって調べたんです」
その瞬間、肌にちりつく殺気。
でもきっとこれは私に対して半分、私じゃない何者かに対して半分……そんな感じだ。
「ですが残念ながらそこまでは調べられませんでした」
瞬間和らぐ殺気に、この人案外分かりやすいな…と胸中で呟いた。
「とは言っても予想はつきますよ。勿論、想像の域は出ませんが。そしてそれが貴方にとって平坦に言ってしまえば“地雷”であるところも理解しています」
「……何が言いたいんですか」
まあ、確かにそう言われるよな。
安泰に雇われてたいならそもそもこんな話題は出さないし、揺さぶりを掛けるつもりにしてはあまりに情報不足だ。
何の為に過去の話を引っ張り出してきたのか、と訝しく思われるのは当然。
だが私の動機は至って簡単だ。
「これから私達は共に泥舟に乗り込むも同然です。貴方の“地雷”には指一本触れない代わりに、それ以外のことは全て話して下さい」
「何故」
「情報こそ私の武器だからです。そして誰かに信頼されてないからと言って、私がその誰かを見捨てて良い理由にはならないからです。参謀として」
「……難儀な性格してますね」
「えぇ、職業病ですよ」
こればかりは仕方ない、と私はまた苦笑いした。
838人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時