ep298 ページ1
―no side―
うだるような曇天の下、葬列がゆっくりと道を這うように進んでいく。
通り過ぎる棺に頭を垂れる喪服の人々。そしてその前には国葬の警備をすべく、真選組の隊士達が列を成していた。
そんな中、屯所では道場に一人残った近藤の勇ましい声が響く。
「えぇい!!おぉぉ!!」
そこへ
「太刀筋に迷いが見える。稽古つけてやろうか?今なら杖でも勝てそうだ」
松葉杖をついて現れた銀時。
「遠慮しとくぜ。こんなムサい所に来て一体何の用だ?他の連中はどうした」
素振りをやめた近藤が問えば、銀時はいざ知らずと言った表情で「葬式にでも出てんだろ」と答える。
そして銀時は屯所へ来る道中、真選組の隊士達が国葬の警備についていたことを思い出した。では何故、近藤がここに残っているのだろうと不審に思い、自ずと生まれる沈黙。
「俺には顔出す資格なんてねェからな」
その沈黙を読み取った近藤が静かにそう言うが、銀時も少なからず同じ感情を抱えていた。
「だが丁度いい。あん時の報酬まだだったろ。こんな時じゃなきゃ伝説の攘夷志士と真選組局長がサシで飲む機会なんざねぇだろ」
そのまま2人は縁側に腰掛けて盃を注ぎ合う。
「戦ってのはつくづく酷だな。勝っても負けても得る物より失う物の方が多い」
何杯目かな盃を飲み干した近藤がゆっくりと口を開いてそう語る。
「その挙句、敗者は失ったものを数えることしかできねェ。俺達の戦いは何だったんだ……払った代償に、汚した手に、意味はあったのかってな」
その言葉に、誰より戦いの重みと後悔を背負ったあの参謀のことがチラつく。
たぶんアイツも葬式には出てねぇんだろうな…と銀時は太陽の覗かない空を見上げた。
「……意味なんてねぇよ。勝とうが負けようが何を護ろうが何を失おうが、戦に意味なんてねェ」
気付けば口から出ていたのは誰の救いにもならない本音。
「最後に残るのは屍と罪だけの不毛の所行だ。そこまでして護る価値のあるものなんて…ねェ。そんなもんがあるとしたら――……」
そう語る銀時が思い返すのは先立った師と将軍の姿だった。
「くだらん戦が必要ねェ時代を築こうと自分と戦い続けた魂達だけだよ。
そしてその魂は死んじゃいねぇ。その想いを繋ぐ者がいる限り」
隊士のいない屯所は静まり返り、風の音がやけに鮮明に聞こえる。
「ならば俺達には別れの言葉も葬式もいらねェな。交わすのはこの盃だけで充分だ」
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時