ep342 ページ45
—貴女side—
船の中が騒がしくなったのは数分前のこと。今頃、隊士達は医務室からいなくなった私を探して船内を右往左往していることだろう。
その参謀が湿った備蓄庫の中で一人、膝を抱えているとは知らず。
使われる予定があるのか無いのか……無造作に溢れかえる段ボールの片隅はいつも通り心地が良かった。
無用の長物のように堆く積み上げられたそれらに親近感が湧くからだろうか……。
そんなことを思いながらさっきから何十回と繰り返したのと同じように今回の作戦を反芻する。
どこが甘かったのか、どこで間違えたのか……
何度も通った思考回路をただただ繰り返す。
暗闇の中でじっと頭だけ回転させていれば、部屋にコツ……と足音が響いた。
ゆっくりと近づくその主は私から少し離れたところで立ち止まる。
見上げれば予想より随分小柄な人影だった。
「……銀時達が言ったの?どうせここだろうって」
「そう。……でも来たのは私の意志」
相変わらず抑揚のない声で言う信女ちゃん。
お互いこの暗闇の中じゃ表情なんか見えないのが今はかえってありがたかった。
「何の用かな」
本題を急かせば彼女は少しだけ言い淀んでから口を開く。
「異三郎のこと……貴女のせいだとは思ってない」
その言葉に私は何も言えない。
鎮痛剤が効いていたはずの脇腹がじくじくと焼けるように痛み始める。
「……そう言えって誰かに言われたの?」
「違う」
淡々と告げる彼女の声が寧ろ私を心地悪くさせる。
私がいかに佐々木局長の死を回避しようとしてもそれは不可能だったとでも言うようだ。
いや、きっと彼女にその気はないのだ。そう感じるのはただ私が捻くれてるから……。
でも……
「君は誰より知ってるはずだよね。守ろうとしたものが守れなかった時、責められ、憎まれた方が許されるより何百倍も楽だってこと」
彼女はそれを幼い時に身をもって知ったのに。
「それでも私を責めてくれないの……?」
「貴女を責めることはできない。たとえそれが貴女を苦しめても……」
そう言った彼女は私の前に白い封筒を差し出した。
一眼で佐々木局長が私に宛てたものだと分かった。
生真面目な文字で『参謀殿』なんて書かれているから。
「……手紙なんて貴方らしくない」
そう呟いた時、信女ちゃんは既にその場からいなくなっていた。
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ギラッフェ(プロフ) - ろこもこさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて感謝しかありません。前作も必ず完結させるつもりですので長い目で見ていてくださると嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2022年1月18日 23時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
ろこもこ(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます!前作の最終兵器に宜しく からずっとファンです…!ギラッフェさんの小説は人物や世界観が作り込まれ、何より愛が感じられて大好きです!!これからも応援しています! (2022年1月18日 15時) (レス) id: c1accee4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - むーさん» そう言っていただけて嬉しいです!ゆるゆる更新してますがどうぞこれからも宜しくおねがいします (2022年1月11日 19時) (レス) id: 3534028906 (このIDを非表示/違反報告)
むー - いつもギラッフェさんの語彙力が凄すぎて本当に尊敬します…これからも頑張ってください! (2022年1月10日 21時) (レス) id: c41de03eef (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ゆりりんさん» コメントありがとうございます!そんなふうに想ってもらっていて感謝しかありません。これからもよろしくお願いします! (2021年11月3日 10時) (レス) id: 26330a8285 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2021年4月22日 16時