【銀魂】前職：攘夷四天王専属参謀 陸

ep256 ページ9

―貴女side―



驚いた皆の顔を見ながら「座って座ってー」と笑うが


「橘ァァァアアア！！！」


再会の喜びなど微塵もなく、鬼の形相で詰め寄る副長。


「オメェ一体どういう了見だ！！荷物まとめて出ていきやがってッ！！」


その通常運転ぶりに懐かしいな、なんて思いながら


「今回は結構長くなるって言ったじゃないですかぁー」

と弁明するが、


「週末には帰って来いとも言った！」

「でもイエスとは言いませんでしたよ？善処するって言っただけで……」

「でもじゃねぇ！せめて報告してから行け！！」



んな無茶な……。
私に『将軍の死を偽造しに行くので有休ください！』って言えと？
いやいやいやいや、それアウトでしかないじゃん。



などと思っていると局長が「まぁまぁ……」と副長をなだめてくれる。



「というか、A君は何故ここに？」

「松平長官から今回の作戦立案に協力してほしいと頼まれまして……」


そう答えれば、いささか面食らったような表情をする銀時。
そしてゆっくりと息を吸うと私に問うた。



「……じゃあ、影武者の首を斬るって作戦もお前の案なのかよ？」


1番聞かれたくないところをぶっすり刺されてひゅっと喉が絞まる。咄嗟の言葉も出ない。



「そういうやつ、おめぇが1番嫌いだったろ」


射抜くような銀時の眼に思わず目を逸らした。






そりゃ考えたよ、違うプランだって……。
誰か救うために誰かを犠牲にするなんて筋違いはなはだしい。『尊い犠牲』とやらなんて糞食らえだ。


……でもこの作戦のために影武者の首は飛んだし船は沈んだ、墜ちた。

ここに至るまでにどれだけの人間が犠牲になったか……分かってるそんなの。


だがそれを言ったところで所詮は言い訳。




何も言えず黙ったままでいると隣の百地さんが口を開いた。


「こやつは最後まで反対しておったぞ。それをわしと服部の小僧で折れろと迫ったのだ。あまりそう言ってやるな」



経緯を知って「悪ぃ……言い過ぎた」とバツが悪そうに言う銀時。


だが、私が折れたのは事実だ。


「銀時が謝ることじゃないよ」



そう言って私は鍋を片付けるために立ち上がると


「じゃ、もろもろの説明は百地さんお願いしまーす」


と笑って、確実に空気の重くなった客間を後にした。




　

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