ep174 ページ27
―no side―
Aが居なくなってしばらくして……
「あの……ところで彼女は一体……」
未だにAの素性を知らされていない武市がいぶかしむように3人に尋ねた。
その問いに、「あ、おまん知らんのか」と言う坂本。
「あいつは俺達の参謀だった奴じゃ」
「攘夷戦争時代の、ですか?」
武市は普段濃淡のない瞳に少しだけ驚きの色を滲ませた。
「なるほど、それで私の肩書に難色を示していたのですね」
「まぁ、別にあいつが席を外したんはそれが原因じゃなかがな」
少し口元を緩めてビールを味わう坂本。
遠くを見つめたまま話を先に進めようとしない坂本に武市の興味はかえってそそられる。
そこへ……
「あいつは攘夷四天王の元参謀であると同時に、鬼兵隊の創設者だ」
桂が空いたグラスを机に置きつつ、話の先を明かした。
「まぁ鬼兵隊と言えど、我々の攘夷戦争敗北によって大多数は処罰されたからな。それと同時に自然解散になった筈だったのだ」
「しかし、高杉殿は再びその時の隊の名を冠して今の鬼兵隊を作られた……」
「Aにとっては今の鬼兵隊は自分が作った負の遺産――過去の亡霊みたいなもんじゃろうな」
武市はそこまで聞くと口を噤んだ。
だが、坂本は続ける。
Aはあの時から、仲間の死や怪我について必要以上に責任を感じては1人で背負い込むたちだったこと。
鬼兵隊の隊員達が処罰されることになった時も、その場に赴いて全員の首が斬られて並べられるまでずっと見ていたこと。
「一瞬たりとも目を逸らさず……まるでそれを見届けることが自分への罰だとでも言うとるような表情で……」
「死んでいった奴等、誰もそんなこと思ってないだろうにな」
その部屋にいた4人は、苦いなにかを胸に詰まらせ、揃って黙り込んだ。
「まぁ、この話は酒の勢いで語っただけのこと。他言無用だ。
Aは、自分のいない所でこういう話をされると嫌がるからな」
「気になっても高杉には聞かねぇ方がいいぞ。あいつにとっちゃ攘夷戦争の話は踏めば木っ端微塵の地雷だからな」
まぁ、Aに関しては特に筋金入りだが……と銀時は武市への忠告交じりに未だ帰って来ないAのことを思った。
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ギラッフェ(プロフ) - 腐った女子さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてすごく嬉しいです!励みにさせていただきますね!! (2020年5月30日 15時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
腐った女子 - いつもこれが更新されるのを励みにしてます(笑) 更新頑張って下さい! (2020年5月30日 1時) (レス) id: 59a5a46759 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 水神の狐さん» コメントありがとうございます!この回、性転換回というより野糞回だな…と個人的には思ってます笑笑 これからもよろしくお願いします! (2020年5月1日 23時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
水神の狐(プロフ) - 安心と納得の野糞wwwめちゃめちゃすきです!!これからも更新頑張ってください! (2020年5月1日 18時) (レス) id: 5a6fe00bf5 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ジャスタウェイさん» ありがとうございます!もうお名前からして同志って感じで嬉しいです!これからも宜しくおねがいします! (2020年4月13日 16時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年9月17日 19時