ep165 ページ18
―no side―
大きな月が燦々と輝く夜更け時――
「こんな時間にどこへ向かうんですか?」
廊下を抜き足差し足で行く爺やこと六転舞蔵は佐々木の声にビクリと足を止めた。
ガラス越しの冷たい視線が舞蔵の小さな背に刺さる。だが彼は負傷を抱えた重い体を硬くして言った。
「命令違反は百も承知……。どうぞ斬るなら斬ってくだされ」
その覚悟ゆえか……一瞬、佐々木が眉を顰めたその時、舞蔵は振り返って言い放った。
「しかしあの日交わした約束――皆が繋いでくれたこの魂の糸だけは……いかなる刃を以ってしても断つことは出来ません」
よもや老体とは思えないぎらりと光る眼をしばらく眺めたかと思うと、佐々木は息を吸い、ゆっくりと宥めるように言った。
「老人の夜遊びなど見逃して然るべきですが、今は状況が違います。政的に付け入る隙を与えてはいけない」
そして最後の忠告だと言って繰り返した。
「部屋にお戻り下さい」
その時、両者の睨み合いを断ち切るように
カラン――……
乾いた缶の音がして、気づけば万事屋の3人が部屋のど真ん中で仁王立ちしていた。
「ぁ、貴方達、どこから……!?」
珍しく目を見開く佐々木に対し、
「缶蹴りやる人この指とぉーまれぇえええ!」
場違いにもほどがある銀時の声が響き渡る。
それと同時に
「「うぉぉぉおおおおお!!!」」
四方の障子が開いて真選組が雪崩れ込んだ。
目を点にしていた佐々木は将軍と姫までその中に混じっていることに気づくと、最早言葉をなくす。
そこへ……
「まぁまぁ。なぁに、ただの憂さ晴らしですよ」
いつの間にか彼の隣に立って言うA。
「また貴女ですか」
「夜遅くまでお務めご苦労様です」
心底厄介だとでも言うような視線にAはへらりと笑う。
「いい加減にして下さい!部外者の侵入を許した上、職務放棄ですか!!」
叫んだ佐々木の横を白い影が豪速で通り過ぎた。
そしてその白い影――――今井信女は
カキーン――……!!
光線のような速度で缶を遥か彼方へ蹴り飛ばした。
「……早く缶取りに行って。たぶん吉原ぐらいまで行ってると思うけど」
涼しい顔をして振り返る信女にもはや呼吸さえ忘れて唖然とする佐々木。
その横でAは「あれまぁ」と素っ頓狂な声を出し
「缶蹴りに入れてほしいならそう言ってくれればいいのに……水臭いですねぇ佐々木局長?」
にたりと笑った。
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ギラッフェ(プロフ) - 腐った女子さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてすごく嬉しいです!励みにさせていただきますね!! (2020年5月30日 15時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
腐った女子 - いつもこれが更新されるのを励みにしてます(笑) 更新頑張って下さい! (2020年5月30日 1時) (レス) id: 59a5a46759 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 水神の狐さん» コメントありがとうございます!この回、性転換回というより野糞回だな…と個人的には思ってます笑笑 これからもよろしくお願いします! (2020年5月1日 23時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
水神の狐(プロフ) - 安心と納得の野糞wwwめちゃめちゃすきです!!これからも更新頑張ってください! (2020年5月1日 18時) (レス) id: 5a6fe00bf5 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ジャスタウェイさん» ありがとうございます!もうお名前からして同志って感じで嬉しいです!これからも宜しくおねがいします! (2020年4月13日 16時) (レス) id: 7540e8ed1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年9月17日 19時