ep216 ページ4
立原道造——……
私が知る彼はマフィア然としたマフィアだった。それこそ、寧ろそれに馴染めなかった私に初対面から強硬姿勢を取るほどに。
はて、拠点脱出の際に私達を庇い敵を引き受けた広津さんを……彼は殺せたのだろうか。
想像し難いその情景を思い浮かべるも、違和感の方が膨れ上がっていく。結局、私は“否”と結論づけた。
「ポートマフィアに一部始終を伝え、協力を仰ぎましょう」
乱歩さんを見れば静かに頷く。どうやら彼と同じ結論に至れたらしい。
今までは通信を傍受される危険を避けるため敢えて連絡を取らずにいたが、花袋さんがいる今ならばもうその心配も無用だ。
私達はポートマフィア首領、森鴎外直通の電話へと繋いだ。
ｶﾁｬﾘと受話器を取る音。
「首領、私です」
電話の先で少し息を呑んだのが聞こえた。
《……そろそろ心折れて帰る気になったかね？》
首領の声は想像していたものの数倍、柔和だった。
反抗して出てきた身の上でありながら、そちらに郷愁を感じているなどと腑抜けたことを漏らしたくなる程度には。
だが……
「いえ、帰るのはまだ先になりそうです。しかしその為に貴方の力を借りることは出来ますか？」
そう告げた。
《状況を共有し給え》
今までの経緯を報告する。
立原道造が《猟犬》の一員であった事実も、『神威』が福地桜痴だったことも
そして——芥川龍之介の殉死も。
電話の先で「そうか」と小さく答える彼に思わず肩が震えた。
その時、乱歩さんがトンと肩を叩いて通話を代わる。
「探偵社としては貴方に《猟犬》の一員である立原道造に寝返りを持ちかけて貰いたい」
《彼がそれに応じる確証は？》
「それはおたくが一番分かってるでしょ」
その返答に首領が鼻で笑う。
矢張り彼にも分かるのだろう、《猟犬》を名乗る立原さんの胸中で、真に棲みついているのが軍警なのか、或いはマフィアなのか。
乱歩さんと首領の話し合いが終わって、首領は「福沢殿も其処にいるのかね？」と尋ねた。
「なんだ」と短く尋ねた福沢社長に彼は——
《探偵社員を匿って先払いは済ませたのです。今度は此方の最終兵器を宜しく頼みますよ》
「無論だ」
《紅茶の香りがしない執務室はとても味気なくてだね》
そう云いながら笑う。
——私もです。
福沢社長が受話器を置くのを見てから、私は小さく答えた。
此の本音は届かなくていい……まだ。
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ギラッフェ(プロフ) - うどんさん» いつも作品愛を届けてくださりありがとうございます！原作ファンの一員としてなんとか良いストーリーを！と思っています笑 来たる年もぜひ宜しくお願いします！ (12月31日 0時) (
レス) id: 046a0c810f (このIDを非表示/違反報告)
うどん - 更新されるたびにいつもギラッフェさんにメッセージを送りたいほどギラッフェさんの作品を愛しています!!ギラッフェさんの作品はいつも作品に引き込まれるほどの素晴らしいストーリーだと思います!!原作の展開が予想できず大変だと思いますがこれからも応援しています! (12月28日 23時) (レス) id: b2d2242acf (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» 楽しんでいただけて何よりです！応援いただきありがとうございます！ (12月11日 22時) (レス) id: 608d959404 (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - ストーリーが繋がってきて、楽しいです！頑張ってください！ (12月11日 19時) (レス) @page9 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - うどんさん» コメントありがとうございます！そう云っていただけるのが何より嬉しいです。是非是非今後ともよろしくお願いします！ (11月24日 18時) (レス) id: 1ed6621db5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ギラッフェ
| 作成日時：2023年11月14日 23時
