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ep231 ページ19

此の決闘は只の脱獄をハイリスク・ローリターンの遊戯(ゲェム)に昇華したと云っても過言ではない。

太宰さんならば自力の脱獄も可能だったろうに。
フョードルとの対決に追い込まれた所為で、その可能性は地に叩き落とされた。


その挙句、“人質”の存在。

否、そんな耳障りのいい被害者じみたものではない、寧ろ“足枷”と呼ばれるに相応しい。

そう……私は今、太宰さんの足手纏いになっているのだ。



その事実に全身が凍りついていく。


“保険”の意味をもう少し考えれば…目隠しの意味を疑えば、こうならずに済んだのだろうか。

気付くきっかけは確かにあった、あったのに。


「2人の英智を集結させれば私など簡単に騙されてしまう!だからそうなった場合は君を殺すことにした。
ディーラーとして至って自然なリスク回避だろう!?」


……否、待て。

たかが私の存在一つ。
そんな大層な抑止力になるわけが——


「なるさ!勿論!充分過ぎるほどに!!」


見透かしたかのような即答。
脳内を埋め尽くす私の疑問が、思考が…まるで凡て筒抜けなのではないかと震える。


外套を翻し、上機嫌でくるりくるりと回るゴーゴリを見て確信する。
道化を演じていた裏で、何から何まで彼の思惑通りだったのだ。


……つまり私の浅慮が戦犯。


この侭では、此処まで必死で積み上げてきた凡てが消えてしまうことも知らずに……。
易々と連れてこられた私の浅はかさが————


思わず眼を向けた太宰さんは先刻と同じ、深淵のように塗りつぶされた瞳で此方を見つめていた。


……嗚呼、思い出した。

彼の眼……路地裏で、お前を救う心算は無いと、そう云ったあの時と同じなんだ。

——呆れ、失望、嘲り。



瞬間、風でも吹き込んできたかのように心臓が冷え切った。


足を引っ張っている。


眼を逸らしても網膜に焼き付いた彼の目は離れない。

思わず俯けば、足元の真っ白な地面が歪に捻じ曲がって見えた。

 
 

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ギラッフェ(プロフ) - うどんさん» いつも作品愛を届けてくださりありがとうございます!原作ファンの一員としてなんとか良いストーリーを!と思っています笑 来たる年もぜひ宜しくお願いします! (12月31日 0時) (レス) id: 046a0c810f (このIDを非表示/違反報告)
うどん - 更新されるたびにいつもギラッフェさんにメッセージを送りたいほどギラッフェさんの作品を愛しています!!ギラッフェさんの作品はいつも作品に引き込まれるほどの素晴らしいストーリーだと思います!!原作の展開が予想できず大変だと思いますがこれからも応援しています! (12月28日 23時) (レス) id: b2d2242acf (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» 楽しんでいただけて何よりです!応援いただきありがとうございます! (12月11日 22時) (レス) id: 608d959404 (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - ストーリーが繋がってきて、楽しいです!頑張ってください! (12月11日 19時) (レス) @page9 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - うどんさん» コメントありがとうございます!そう云っていただけるのが何より嬉しいです。是非是非今後ともよろしくお願いします! (11月24日 18時) (レス) id: 1ed6621db5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年11月14日 23時

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