ep404 ページ7
空になった自分のグラスに酒を足そうと手を伸ばすと、ふいと取り去って注いでくれる晋助。
珍しいこともあるもんだとお礼を言えば「それで終いだ」と言って酒瓶を仕舞い込んでしまった。
成程、酒瓶の主導権を掻っ攫われただけだったか、まぁもともと晋助の酒なんだけどね。
「酔っ払いの策に巻き込まれんのは御免だ」
「素面で考えたよ。それでダメだったからちょっと酒を入れたんじゃないか」
グラスを傾けながらそう言えば、私の横に回り込んでパソコンの画面を覗く晋助。
説明してみろとばかりにこちらを見るから、仕方なくグラスを置いて、画面と頭の中の作戦、盤面を繋ぎ合わせて説明していく。
…
「……という形で全て噛み合えば少なくとも地球そのものは破壊されずに済む」
それと引き換えに宇宙の至る所で多大な犠牲が生まれるわけだが。
こんなの地球を守るためにその分の命を天秤に掛ける只の物々交換だ。あまりに虚しい。
「……何が気に入らねぇ」
晋助は現時点この策しか思いつかないのを分かってて訊いてくる。策に致命的な欠陥は無いと判断した上で何故それに満足できないのかを問う。
「不確定要素が多すぎて本当にこれでいいのか分からない。それと……きっと
私に策を考える術を授けてくれたのは松陽だ。私の思いつく策なんて全部あの人の二番煎じなのにどうやって出し抜けって言うんだ……。
膝の上でグッと指に力をいれた私を知ってか知らずか、でも晋助は言う。
「今更何言ってんだ。てめぇの策に不確定要素がねぇことなんざ無かっただろ」
「う"……まぁ、それはそうだけど」
分かってる。ある程度の不確定要素を抱えたままその時前線に立つ本人に選択してもらいたい。後悔がないように……その力で切り拓いてほしい。
無責任に聞こえてもそれが私の“突飛な”作戦の真髄であり参謀としてのポリシーだ。
でも今回ばかりはあまりに規模が大きすぎて感覚が麻痺する。
思わず肩がぶるりと震えた。武者震い…だと思っておきたい。
前線に立つ者でありながら鬼兵隊の総督として指揮も担う晋助なら……とこんな締まりのないことを吐露してる自分にほとほと嫌気がさしてくる。
「ごめんやっぱこの話やめ。無い答え求めてんの情けなくなってきた」
こんなこと考えたところで何にもならない。寧ろ頭が重くなるだけだ。
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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時