ep403 ページ6
その晩——。
私は晋助の部屋で只ひたすらにパソコンの液晶を凝視し、指を動かし続けていた。
未だ眠る晋助の規則正しい寝息とキーボードの弾かれる音だけが響く部屋。
眼の疲れを感じてふと顔を上げれば、丑三つ時真っ只中を指す時計が目に入る。勿論そんなに長居していた自覚もなく、どうりで身体が軋んでいたわけだ。
こっそり拝借してきた晋助のであろう酒をグラスに注ぎながら外を眺める。背もたれに体重を預け、グラスの中身をあおって目を瞑った。
天鳥船のデータは各所に共有したし、地球の襲撃の状況も現地にいる彼等が報告してくれている。ターミナルのある歌舞伎町がやはり1番被害が大きい。
万事屋が地球に帰還するまでにはあと1日弱。交渉組が天鳥船に到着するのは2日後。
虚は最後必ず地球を主戦場にする。ならば交渉組も最終的には地球に帰還させて総勢力を掛けたい。
頭の中で時計の針を進め、人を動かし、作戦の盤面を構築していく。
不老不死というあまりに未知数な敵。しかしその特性さえ封じられれば勝算が無いわけではない。
星海坊主の言っていた方法ならば……いやでも烙陽の戦いではそれじゃあ封じきれなかった。もっと完全に回復能力を削る方法を考えないと——……
瞼の裏で、かつての師の鮮やかすぎる剣筋が甦る。殺戮そのものが目的になった彼の刀は私達に止められるような代物なのだろうか。
グッと眉間に力を入れたその時——……
「……おい。シケた面で勝手に他人の酒開けてんじゃねぇ」
瞼を上げた先にベッドから起き上がり寝起き不機嫌キメ込んだ晋助がいた。
「どうもすみませんね」と言いながら私は自分の眉間に寄っていた皺をぐいぐいと伸ばす。
「あと半日は寝てて貰うつもりだったんだけどな」
「ほざけ」
と言いつつ、その瞼からは隈も消えて足取りもしっかりしている。やっぱり強硬手段でも寝かせてよかった。
起き抜けの晋助は向かいの椅子に座ると自分にも注げとばかりにグラスを傾ける。
「えぇ寝起き酒?普段の不摂生が垣間見えますなぁ」
「そもそも俺の酒だ。どうせ後から水でかさ増しでもして誤魔化すつもりだったんだろ」
「やめてよ、そんな銀時みたいなことするわけないじゃん。全部飲み干して証拠隠滅一択」
「大して違わねぇ」
そう、昔銀時は自分がこっそり飲んだ酒を水で誤魔化して、晋助と10日間にわたる冷戦ときどき乱闘勃発の大喧嘩に繋がったことがある。
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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時