ep402 ページ5
—貴女side—
流石に面食らったのか黙り込む万斉さんを一瞥して、コーヒーを味わう。
少し意地悪な言い方をしすぎたかもしれない。あまりに彼が期待に満ちた眼差しをするから……つい。
「すみません、わざと大袈裟に言いました。単にこれを渡して欲しいんです」
懐から出したインカムを机に置いてまたゆっくり口を開いた。
「私が直接渡してもあいつ絶対受け取らないと思うので」
自分で言った筈のその台詞が結構堪えて眉が下がった。
「烙陽で私の指揮を聞いたのはきっと一時の興奮的なやつです。多分冷静になった晋助はそれをしないと思います」
「……というにはあまりに鮮やかな連携であったが」
万斉さんの言葉に少し救われて、ふっと息をつく。
「居場所さえ分かればいいんです。GPS付きの優れ物なので説得するもよし、こっそりあいつの懐に入れておくもよし、何とかして身につけさせてください」
「拙者がその頼みを聞くと思った根拠は?」
さっきから思っていたけれど、一見一匹狼を彷彿とさせる河上万斉というこの人は、案外知りたがり。そして結構アツい。そりゃ晋助が気に入って仲間にするのも納得するくらい。
「……私の前職をお忘れですか?真選組の参謀です」
動揺を見せない万斉さんだが思い当たる節はあるはずだ。鬼兵隊が伊東鴨太郎を使って真選組転覆を狙ったあの事件。
「私はあれの直後に真選組立て直しも兼ねて雇われたんです。組織が不安定になった事件の詳細を知るためにその報告書は全て目を通しました。……それこそ隅から隅まで」
そこで見つけたのだ。
「晋助の命令に背いて真選組の監察方を見逃しましたよね」
怪我をして逃げる術の無かった山崎君にとどめを刺さず、寧ろ逃げおおせろとでも言うようにその場を後にしたと。
「ある意味前科のある貴方ならやってくれるかなと希望を掛けたわけです」
それがなくても他の人には荷が重いだろうとも思った。
「…………頼まれてくれませんか?」
「意外にも必死でござるな」
そりゃあ必死にもなる。戦いが始まったら私は情けないことに、このちっぽけな機械無しには晋助の安否を把握することすらできないのだから。
真っ直ぐ見つめたサングラスの先の瞳。それがゆっくりとインカムへと注がれた。
「……上手くいく保証はできないが」
「ありがとうございます」
そう言って私はインカムを託した。
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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時