ep433 ページ36
やっと彼女らしい笑い声を聞いて安堵する桂に、Aは
「ありがとね」
小さく言った。
「ヅラが引き留めてくれなかったら、また血迷って逃げてたかもしれない」
視線を落とせばはらりと垂れた髪が不意に表情を隠す。
「繋ぎ止めてくれてありがとう」
「……俺は提案をしたまでだ。決めたのはお前だろう。
それに半分は隣にお前を置きたい俺のわがままだ」
“わがまま”と聞いて純粋に驚いたのか、顔を上げて眼を丸くするA。
しばらく固まっていたかと思えば、急に真剣な表情でなにか思案し始めた。
そして、顎に当てていた手を下ろしながら…
「……ねぇ、それちょっと手加減できる?」
と意味のわからない台詞を寄越す。
手加減?何を?と怪訝に思った桂は自分の言動を振り返ってみる。すると心当たりに気づいてまさかと思うものの、不覚にも頰が緩んだ。
それを見たAは「うわ、言わなければよかった。余計に悪い顔してる」と今更後悔。
「“それ”って何だ?」
「ねぇ、わかってて言ってるよね?」
「分からんな。だが言うなら考えてやってもいいぞ」
それを聞いて「うぐ……」と心底不本意そうな声を漏らしたAは…
「……今、弱ってるので…あんまり甘やかすようなこと、言わないでほしい……です」
最初こそ耐えていたものの、段々と歯切れが悪くなり、気づけば両手で顔を覆い隠していた。
そこへ……
「…………あのぉ〜悪ぃんだけど、お二人さん」
桂と共にAを訪れた筈が、すっかり存在を忘れられていた松平の声。
「その甘酸っぺぇの、やるなら他所でやってくれる??」
居心地の悪さたるや。
その頃にはもう限界突破していた。
こうしてAは桂の参謀として復興計画を先導し、夢物語に見えた江戸の再興を現実味あるものへと変えた。
その傍ら、馴染みの面々や全国に散らばった仲間を介して情報網を張り巡らせ、虚の行方を追いつつ……。
「え〜…今日もGPSは——……応答なし、と。ハイハイ、さぁて本日もお勤め頑張るかー」
時に旧友の行方を案じつつ——。
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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時