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ep426 ページ29

静かに、深く、深く呼吸をする。
本当に伝えたいのはこんな甘ったれた弱音じゃない。


もう一度、彼等全員、一人ひとりを意地でも見逃さないように見つめて——


息を吸った。




「お互い死んだらこれが最後だ。さよなら……“君”に出逢えてよかった」



……誰かの息を呑む音が聞こえた。



「……でももし、神様の気まぐれか何かで……“君”も私も生き残ることができたら——……
その時は……また肩でも組みながら、旨い酒を飲んで……バカな話をしよう」



笑った筈なのに言葉尻が震えた。

今にも溢れそうになった涙を零さないように懸命に唇を噛み締める。




ああ、どうしよう……


彼等の目に映る最後の参謀の姿が、こんなのでいいわけないのに。









しかしその時、



静寂を破るように「……ったりめぇだ」と吐き捨てる副長の声がした。



「お通夜開くにはまたえらくフライングですぜぃAさん」


それを皮切りに隊士達がさっきまでの静寂が嘘のように、次々と口を開く。



「まぁ橘参謀のことですから次の瞬間案外けろっとしてそうですよね」

「寧ろ今度は俺らがあの人に『腑抜けてんじゃねぇ!』って刀投げつける番じゃね?」

「出たーー!伝説のサイコエピソード!!」

「懐かしいー!!」

「おま、バカか!?参謀が弱ってるからってンなことやってみろ、戦いを前に吊し上げられるぞ……?」

「いや、でも見廻組に寝返ったふりしてオレたち騙してたのまだちゃんと謝罪されてなくね?」

「あ、確かに。……じゃあ諸々終わった後に飲む酒は全部、橘参謀のおごりで!」







…………言いたい放題だな、こいつら。



アホらしくなって肩の力が抜ける。
……はぁ。


ホントに……しょうがない人たちだ。




ふっと漏れた笑いと近藤局長の声が重なる。



「行くぞッ!!!」




私の横を通り過ぎる彼等は、誰からともなく私の肩をトンと叩いて目下の戦場へと一心に駆けていく。



その一人ひとりの背中を見送って、最後に呟いた。












「————……また逢おう」




 

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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時

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