ep421 ページ24
沈滞と緊張の混ざる空気の中、Aは唇を固く結んだ。
虚の剣筋が視えたところで状況が開かないのは元々自覚していたからだ。
軌道を追えたとして自分が対峙するとなれば力量不足……だからと言って自分が刀の軌道を仲間に伝えようにもそれを察知して剣筋を変えられるのが見えている。
圧倒的な差を前に誰もが緊迫する最中——
「終わりの口火を切るには君達の無駄な戦いが必要だったのです。しかし今やそれも必要なくなりました」
何が言いたいのか……Aは虚の言葉の始めから終わりまで何一つ理解できないことに焦った。
理解できないと言うことは自分の想定から外れているということだ。そしてそれはつまり相手の読みが一枚も二枚も自分を上回っているということ。
背筋が冷えた。
「終わりとは美しく静謐であるべきです。この惑星の終わりに君達はいらない。一足先に行って待っててもらえますか」
まるでその答え合わせでもするように足元から迫る轟音。唸る獣のようなそれに全員が”何かが起こる”と冷や汗を握った。
「不思議に思わなかったんですか。いくつもの星の龍穴を破壊した私がなぜ地球にだけ手を出さないのか」
龍穴——
その言葉でAの頭は電流が走ったかのように弾かれる。
——やられた……
「とっておいたんですよ、君達のために」
その瞬間、ビルの外で目を焼くような光の柱が乱立する。
地球に張り巡らされたアルタナが龍穴を介して星を自爆させている。もはや地球そのものが巨大な爆弾——。
「私にはいつでも終わらせることができた。つまりあなた達はずっと私の掌で踊っていたに過ぎないんですよ」
——全部掌の上な気がして……
当たらなければと願った自分の弱音がこうも的中したことにAは唇を噛み締めた。
「地球のアルタナとヒノカグツチ、これらがぶつかり合えば宇宙すら終わらせることができる。全ては一緒に仲良く死ぬためです」
アルタナについての知識量のさゆえの敗北か、虚がここまで死に執着していると読み切れなかったゆえの敗北か……。
「悲しむ必要も苦しむ必要もありません。君達が生きた証など何一つ残りはしないのだから」
足元がガラガラと瓦解し始める。
「逃げ——、」
誰かのその言葉が届くよりも前に
ドッ……!
ビルは光に呑まれた。
508人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時