ep420 ページ23
「だから今は我慢してあげるよ。俺が殺るまでは誰も死なせない!」
それが共闘の号令となり、第七師団、万事屋、真選組が入り乱れて次々と敵を斬り伏せていく。
「楽しみをとっておくことも覚えたか」とAは半笑いを浮かべつつ、状況を確認する。
敵の夜兎部隊はこちらの増援に混乱し、撤退を整え始めている。ならばここは敢えて見逃して味方の消耗を避けよう…と結論に至ったその時——
「退くぞ!」
「一旦態勢を立て直す!早くしっ——」
突如、背後から串刺しにされた敵が力無く地面に沈んだ。
それに唖然とする間も無く降り注ぐ——錫杖の刀。しゃらりしゃらりと相変わらずの耳障りな音にAは顰めた眉を隠しもしなかった。
「お出ましか……奈落」
そしてその先からゆらりとあらわになる影。こちらを見下ろして高みの見物とばかりの影が口を開いた。
「もはや解放軍に君達を終わらせる力は無いらしい、いや君達の力がそれを上回ったと言うべきか」
虚……。
かつての師と同じその姿形。自分の目の前で首を切られたその人が、今自分達を見下ろしているこの状況にAは思わず固唾を飲んだ。
だが視線は虚へと固めたまま動かさない。逸らせば逃げたことになる。一挙手一投足の情報全てを拾い上げて必ず策に繋げる……そう覚悟を決めて。
そして心をざわつかせる波を鎮める。姿こそ同じであれど、声色は無機質でどこまでも冷たい。纏う空気が似ても似つかない。
——私を迎え入れてくれたあの人はそこにはいない。
そう思えば寧ろ戸惑いはなく、そんな虚に感謝さえ覚えていた。
ふぅ…とゆっくり息を吐き出した彼女に銀時が様子を探るが、「大丈夫」とその一言だけが返ってきた。
「あなた達のお陰でヒノカグツチが稼働するまでに戦況を泥沼化させることが出来た。その愚かさに感謝します」
その言葉と共に目の前に降り立ったかと思うと一瞬の間に眼前の夜兎を切り刻んだ虚。鮮血の吹き出す円陣のなかに独り身を置いて刀を仕舞う。
否……正確に言えばあまりの速さゆえ刀を抜いた瞬間も納めた瞬間も、その場にいる人間には知覚することができなかった。
土方が後ろ手に問う。
「……橘…あの剣筋視えるか?」
「刀の長さを想定した上で切先がギリ見えるか見えないか。あとは経験値からの直感と予測です」
その眼に一縷の望みを託していた故に、その答えに味方の肩は重さを増した。
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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時