ep413 ページ16
—no side—
「真選組は次の道を左へ、銀時達は直進」
はて、何故すっかりあの参謀は他人の部屋を宜しく仕事部屋扱いして居座っているのか……
高杉は少し首を捻りながら、この局面にして冷静すぎるAの声に耳を傾けていた。
「右から敵来るよ」
宇宙にいながらまるで彼等と共に江戸にいるかのように敵の動きを把握し、統率する。
目を細めて見れば、彼女の画面には江戸の監視カメラと思わしき映像。成程、現地の映像をリアルタイムで把握するためにそこまでするか。
画面に所狭しと映し出されているそれらに、恐らく街でまだ生きているカメラ映像を全て掻き集めてきたのだろうと察した。
普通の人間ならば次々と切り替えていく映像の情報を把握するなど不可能だろう。だが彼女にはその曲芸を可能にする“眼”があるのだった。
勿論それにしたってその情報量を捌く頭脳は十分規格外に違いないのだが。
「相変わらず……いや、それ以上か」
高杉は呟いた。
御庭番衆の火幕で……だの、城は取り敢えず……だの多方面に指示を出すその姿に内心舌を巻く。
ここに辿り着くまで決して足を止めず自分の武器を磨き続けたAの過去が透けて見えた。
「は?長距離ビーム砲?火幕が邪魔なら上から撃ちゃいいってか?」
悪態を吐いた彼女は「結局、悪手を使う羽目になったなぁ」と言ってインカムを外した。
「終ぇか?」
「うん。もう通信つかないから」
その時ちょうど江戸では、源外の発明によりありとあらゆる機械類が機能不全に陥っていた。
「犠牲も大きいし通信断絶はリスクだから火幕が効かなかったらって条件付きだったんだけど……」
彼女はゆっくりと首を回してしばらく目を瞑る。そしてゆっくりそれを開けると言った。
「潮時だね、私そろそろ行く」
すると同時に椅子から立ち上がり、荷物をまとめ始めた。
潮時——つまり、地球に帰還するということ。
早々と荷物を背負った彼女は「てか気になってたんだけど、それ三味線?」と高杉の構えていたそれを見て尋ねた。
「あぁ」
「意外。晋助、楽器やるんだ。似合わな——……」
ころころと笑っていた彼女は出かけていた言葉を不意に止めて
「いや、そうでもないね」
ふっと微笑んだ。
「一曲聴かせてよ、参謀代として」
「雇った覚えはねぇ」
と言いつつ、部屋には綺麗に張った弦の哀愁帯びた音が響いた。
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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時