ep411 ページ14
「交通法違反に建造物破壊、その他諸々……現行犯で逮捕する」
狼狽する解放軍に警察手帳を掲げて近藤は言う。
帰ってきた……チンピラ警察が、江戸に。
安堵とも郷愁とも言える気持ちを抱えていた万事屋。その横を風のように通り過ぎる真選組からは喝が飛んだ。
「何モタモタしてんでィ」
「勝負はこれからだろ」
「この国はまだ終わっちゃいねェ」
やっと目を見開いた銀時に、舌打ち混じりの土方が言う。
「てかマジで半端やってんじゃねぇぞ。ウチの参謀がカンカンで聞いてらんねぇったら」
その耳には青く光る見慣れたあのインカム。そこでやっと銀時は思い出す。自分がインカムの電源を入れ忘れていたことに。
震える手で通信を繋げれば最初に聞こえたのは、絶対零度で「……銀時」と呼ぶAの声だった。
宇宙を越えて届く地を這うような声に背筋が凍りつく。しかしその緊張に反して彼女は一変、呆れたように言った。
《テンパってたのか必死だったのか知らないけど、インカム切りっぱなしはやめて。ほんと……焦った》
深い溜息は呆れと安堵が半々だった。
「ったく、そのせいでケツ叩かれた俺らにはイイ迷惑だぜ」
《何言ってんですか副長。チンタラ行軍してたのはそっちじゃないですか》
「無茶言わんでくだせェAさん。こちとら久しぶりの江戸で道に迷ってたんでさァ」
《嘘だろしっかりしてくれよお巡りさん》
Aの声を聞きながら、つくづくこの参謀は——と銀時は苦笑を禁じ得ない。
真選組にもインカムを渡してあったとは……
「おめぇ一体いつからこうなること見越してたんだよ」
《見越してはないよ。備えあれば憂いなし。いつか使うこともあるかと渡しておいたらこうなっただけ》
言い草からして本当だろう。
《ただ、それが江戸城と君の戦意を守ったのなら万々歳だ》
それを聞いて空を見上げた銀時。江戸城は煙の晴れた空に凛としてそびえ立っていた。
その空では——
「やれやれ喜々の国ぶっ潰すために兵隊かき集めて来たってのになんてザマだよ」
松平片栗虎率いる航空艦隊が敵の攻撃を全て迎え撃ち、薙ぎ払った後だった。
「失せな外野ども。てめーらが戦ってたのはただの空の国。家主のお帰りだよ」
そして傷一つない江戸城を背に言う。
「この国を護るのも滅ぼすのもこの国に住まう俺たちの背負う業だ!てめーらに出る幕なんかねェ!」
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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時