ep409 ページ12
さて、現時点の情報をもとに私が考えつくのはこれくらいか。
ここから各パターンに対処できる策をそれぞれまた考えないと……と思いながら一枚一枚を拾い集める。
散らばっていた数枚を拾い上げた万斉さんはそれを眺めながら私に尋ねた。
「いつもこうしているのでござるか?」
「まぁアナログな方がこう……壁一面に貼って全体を眺めながら頭を整理できるので」
そう答えて彼の顔を見るが、心底理解しかねるとでも言うような些か引いた表情をしていて笑ってしまう。
「何か御用でした?」
「いや少々、気になっただけでござる」
いまいち歯切れの悪い答えからして、たぶん晋助あたりが様子を窺ってこいとでも言ったんだろう。
そう気を遣われるのが嫌でさっさと自室に戻ったのに……バレてたか。
「私と晋助の間でさながら二重スパイですね」
しかし笑いながら視線を向けた先で、彼はまだ拾った紙に視線を落としていた。
「気になることでも?」
しばしの熟考の後、口を開いた万斉さんは言う。
「……自分の作戦に人の命が掛かるというのはどういう感覚でござるか」
走り書きと構想の断片しか書かれていない紙切れに何か感じたのだろうか。
「よく聞かれます。シンプルに言って…怖くて重くて辛いです」
手元の紙を整えながら言う。
「でも、たぶん“参謀”という道すら閉ざして逃げたら私は自分を許せないので……というかそれに関しては一度経験済みなので」
整えた紙を机に置いて息を吐いた。
「私の作戦で死んだ彼等の命や想いを背負って、また次の誰かのために作戦を立てる。そうすることでしか償えないのだと自分に言い聞かせてました」
ふと万斉さんを見れば、彼は何か言う素振りなど無く、ただ静かに耳を傾けていた。
「……でも以前ある人に言われたんです。自分の死を背負われるなどクソ喰らえだと」
蘇るのは几帳面な字で綴られた遺書紛いの手紙とあの飄々とした白い隊服。
「たしかに考えてみればそうだなぁと。死を覚悟したその人の意思までまるで私のものだったかのように背負うのはおこがましいと気付かされました」
「今はもうそれらを背負わないと?」
「いえ、これからもきっと背負っていきます。でもそれと関係なく、私は参謀として生きるし生きていたい。今はそう考えています」
私はそう言って彼の手にあった紙を貰い受けた。
「成程。背負うために参謀をするのではなく、参謀として背負うということでござるな」
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Hi(プロフ) - ぜひ!末永くお待ちしております(*^^*) (2月18日 2時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - Hiさん» コメントありがとうございます!わかります、私も原作で涙しました笑 明言はできませんが決して救いも希望もない結末にはしないので完結まで楽しみにしていてくださると嬉しいです (2月17日 21時) (レス) id: 2081f8c6f1 (このIDを非表示/違反報告)
Hi(プロフ) - コメント失礼致します!大変面白く中身もきっちりと構成されていて感動しながら読んでいます(*^^*) 野暮ですが、希望としては高杉晋助が死なない方向がいいなぁと思っています、打たれ弱いので笑笑 (2月17日 15時) (レス) id: c9fcf96ef3 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - りんごジュースさん» コメントありがとうございます!キュンキュンしていただけましたか!とっても嬉しいです(^^) 今後ともよろしくお願いします! (1月31日 0時) (レス) id: 4ad20a9210 (このIDを非表示/違反報告)
りんごジュース - コメント失礼します!主様の作品どれも素敵で一気に読んでしまいました笑笑どのお話もキュンキュンしてました!!これからも陰ながら応援しています! (1月30日 22時) (レス) @page50 id: 81b633d03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2023年9月10日 22時