ep29 ページ31
草木も眠る丑三つ時。
風に揺れる窓ガラスの音で目が覚めた。
夕飯も食べずに寝たせいか、ぐぅと締まりのない音を出す自分のお腹に溜息をつく。
あぁ、でも動きたくないなぁ。
天井を見上げながら、布団から出る手間と空腹を天秤にかけてみるが
ぐぅ…
ダメだお腹空いた。台所に行って何か夜食でも作ろう。
そう決心してふぅ、と息を吐いて数秒後――……
廊下の板が微かに軋む音に自然と視線が鋭くなる。
誰か来る……。
布団の中で刀を握りしめた。
だが、ゆっくりと近づいていたその足音が突然止まる。
そして次の瞬間――――
勢いよく開かれた襖からぶわぁっと旋風が雪崩れ込んだ。その風とともに現れた影は目にも留まらぬ速さで抜刀し、それを私の元へと真っ直ぐ振り下ろす。
ザンッ——……!
顔のすぐ横に振り下ろされた刀。斬撃で舞った布団の羽毛を眺めながら私はその犯人に尋ねた。
「……夜這いかな?お年頃だねー、沖田君」
「なんで避けなかったんですかィ?」
あら、流された。
「俺に斬るつもりがねェこと、わかってたんじゃねェですかィ?」
胸中、ぎくりとして口を閉ざすも沖田君は続ける。
「刀の軌道を見て避けるまでもねぇって思ったんじゃねェですかィ?」
しゃがみ込んで顔を寄せた彼の真剣な顔に私は思わず……
「ぷ、ふふふははははは」
笑ってしまう。
「いや、ごめんごめん。沖田君も回りくどい聞き方することあるんだなと思って……。
私の眼について聞きたいならそう言えばいいのに」
そう聞いて振り下ろしていた刀を鞘に戻した沖田君。
私は布団から這い出て彼に向き合った。
「沖田君、双眼鏡って人間の視力にするとどれくらいか知ってる?」
「……知りやせん」
「20くらいだって言われてる。私はね、眼を凝らすとそれくらいまで視力が上がるの」
つまり双眼鏡並みの視力を持つ。
人種の違いはあれど眼がいい人と言ったってその視力は1.5、よくて2.0。視力20が規格外なのは説明するまでもないだろう。
「そしてそれと同時に動体視力も上がる。人間案外、見えてると避けられるもんだよ」
「……つまりAさん自身はただの人間だと?」
「そう、私はまったくの人間。しかし唯一、この両眼を除いてね」
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ギラッフェ(プロフ) - からちぇさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも応援お願いします! (2020年9月11日 22時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
からちぇ - ドストライクな作品でした!めちゃくちゃ好きです (2020年9月10日 19時) (レス) id: b750728265 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 今井月華さん» コメントありがとうございます!ちょっと気を抜くとすぐ体調崩しちゃいますからね、気をつけます。月華さんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ハニーさん» ご心配ありがとうございます!これからインフルエンザの季節ですし、ハニーさんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
今井月華(プロフ) - お疲れ様です。体調にはお気をつけ下さい^_^ (2018年11月2日 21時) (レス) id: 7d138352b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2018年10月1日 22時