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ep37 ページ39

「で、本当のとこはどうしたんだよ」


銀時がそんな質問をしたのは酒盛りも始まってしばらくしてからのことだった。


「ん?本当のとこって?」

「とぼけんじゃねーよ。ヤケ酒つってたろ。何のヤケなんだよ」



痛い所を突かれて黙りこみ、酒をぐいっと煽った私に溜息を吐く銀時。
だらりとしているようで鋭い視線が刺さる。

仕方なくもう一杯、酒の力を借りてから私は口を開いた。


「攘夷の時の仲間に出くわして……過去の清算が済んでないんだなって実感した」


酒の水面に浮かぶ自分を眺めては目を瞑る。
清算できるとは思ってない。そんな甘っちょろいことは考えてない。

でも重くて仕方がない。この星に帰ってきてから嫌でも眼にする幕府と攘夷の対立構造。

忘れ去ろうとして、忘れることができていた筈のドロドロした感情が蘇ってくる。



「……あっちにいた頃はあっちが正しいと思ってた。でも結局逃げてこっちに来た。
もうどっちが正しいとか考えたくなくて……考えなくて済む今に甘えてる。私、何も変わってないんだよ」


淡々と、茫然と呟き続ける私に銀時は不意に「あのよぉ」と呼びかけた。


「オメーの言うあっちとかこっちとかそっちとか……そんなに重要か?」


は?


考えてもいなかった問いかけに私は危うく酒を零しかける。



「俺らはオメーの言う“あっち”で刀振るってた時だって本当に“あっち側”の為に闘ってた訳じゃねぇだろ」



そう言われてふと松陽の顔が浮かんだ。

……そうだ。私達は正直、攘夷とか天人とか幕府とか……そんなものどうでも良かったんだ。

松陽と仲間が守れれば、それで良かったんだ。



「“あっち”だろーが“こっち”だろーが、仲間守りてぇって気持ちは変わらねぇ。
変わらないことを嘆くんじゃねぇよ。むしろそこだけは曲げんな」



視線を上げればニタリと笑う銀時と目があった。


 




「…………銀時……」

「何だよ……」


じぃーっと凝視されて思わず身を引く銀時に私は言う。


「すごくいい事言ってくれたのは感謝してる。……でも私の中で君に励まされたという事実が結構屈辱なんだけど、どうしたらいい?」

「知ったこっちゃねーよ!!」

いつものリアクションに笑い転げる。


でもその実、“そこだけは曲げんな”は、敢えて曲げて逃げてきた私には耳が痛すぎた。


そこにおつまみを運んで来た新八君が「あんまり呑み過ぎないで下さいよ」と念を押すが


どこ吹く風だったのは言うまでもない。



 

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ギラッフェ(プロフ) - からちぇさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも応援お願いします! (2020年9月11日 22時) (レス) id: c665168944 (このIDを非表示/違反報告)
からちぇ - ドストライクな作品でした!めちゃくちゃ好きです (2020年9月10日 19時) (レス) id: b750728265 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 今井月華さん» コメントありがとうございます!ちょっと気を抜くとすぐ体調崩しちゃいますからね、気をつけます。月華さんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ハニーさん» ご心配ありがとうございます!これからインフルエンザの季節ですし、ハニーさんもお気をつけ下さい(^^) (2018年11月3日 7時) (レス) id: c530a04275 (このIDを非表示/違反報告)
今井月華(プロフ) - お疲れ様です。体調にはお気をつけ下さい^_^ (2018年11月2日 21時) (レス) id: 7d138352b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2018年10月1日 22時

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