Continuation3 ページ25
人通りが少なく、静かな町並み。
もう少しで、あの世界の始まりの場所がある。
歩く足が段々早くなり、マフラーがフワフワと揺れる。
頬を掠る風は冷たくって、手袋のしていない手が冷たくって。吐く息が白く、もくもくと煙の様に上がって行く。
あぁ、本当に、あの時と同じだ。
古いアパートの角を曲がると、小さな公園があった。
遊具も少なく、錆びれていて、子供すら近づかない。…僕がよく行っていた公園。
中心部に位置する滑り台の上で、僕はもう一度、あの時と同じ様に寝転がる。
もう大分大きくなった体では、体を伸ばすとぎゅうぎゅうだけれど、見上げた空は変わっていない。
広がる橙色、それに赤が混ざって、薄らと紫も混ざって。
その下地に、柔らかそうな雲がモコモコと浮いている。鰯雲だ。
遠くからは無機質な音楽が聞こえた。聞き覚えのある…5時を知らせる放送。
風も冷たく、僕の服を揺らす。カァカァと、烏の鳴き声が響く。
大切だった。
大好きだった。
もっと伝えて置けば良かった。
とめどなく、言葉が溢れる。
後悔した所で何も無い。
何事も後悔をしている時には、もう既に遅いのだ。
そして、それを知るのも後悔している時だ。
「あー、馬鹿だな僕」
子供から大人になり、学んだことってなんだろう。
いくら勉強をしようと、いくら仕事をしようと、大切な事を忘れてちゃ望んでいる幸福も手に入らない。
或いは、その幸福も、気を抜いた一瞬のうちに消え去ってしまうのだ。
僕は、それを、今になってやっと分かった。
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5時の音楽が鳴り終わる。
そろそろ帰らなければ、社長も心配する。
そう思い、立ち上がろうとした時…
『乱歩君ッ!』
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カナ - 夢小説に自分の伝えたいことをこんなにも自然に綺麗に入れていてとても素敵だなと思いました。これから感謝とかをきちんと伝えていきたいと思いました。ありがとうございます。 (2021年11月23日 16時) (レス) @page29 id: 35e821d5d5 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん太郎 - 感動しました。最後ボロ泣きでした。死ぬと自分も相手も何も出来なくなりますもんね。ちゃんと周りの人に感謝とか伝えていこうと思います。佐藤さん出てきて嬉しかったです。最後の太宰さんも感動! (2017年1月13日 18時) (レス) id: 0f5e4549d3 (このIDを非表示/違反報告)
千秋 - とても感動しました。青春定理の作者と同一人物とは思えないしんみり……( 死ぬって何も私達には分からないですけどやっぱり、究極の別れみたいなんだな……と思いました。とても素晴らしかったです。 (2017年1月4日 23時) (レス) id: b5473cb104 (このIDを非表示/違反報告)
東條にこ(プロフ) - 太宰さんと佐藤さんの話も以前読んでいたものです。 最後まで涙が止まりません。いろんな意味で本当にありがとうございました! (2017年1月3日 20時) (レス) id: db321f67f6 (このIDを非表示/違反報告)
HANA - 涙が止まりません(・・,)。なくなった物はなくなってから大切だって気づく。良い言葉です。どちらの気持ちが理解できてとても感動しました。ありがとうございます。 (2017年1月3日 19時) (レス) id: 09909c1fdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:棒付きキャンディと愉快な仲間達 | 作成日時:2017年1月2日 11時