中王区区長の娘、ヒプノシスマイクを使います

マイクを二十一回 ページ24

『さあて、バトルに入る前にまずは、今大会の主催であり、我らが中王区を取り仕切るあの方にご登場いただきましょう！

中王区区長、中真我香織様です！』

うわっと歓声が上がり、舞台袖から出てきたその女性に注目が集まる。

中真我香織。この区に住む者なら知らざるを得ない人物が珍しく人前に顔を出そうというのだ。当たり前だが、相当な反響がある。

「へーへー、いきなり香織さんの挨拶かよ。そりゃあ盛り上がるわな。」
「ちゃんと、考え、られてる、ね。」

客席の2人も苦笑いを浮かべながらステージを見る。

至って冷たい表情を一寸も動かすことなく彼女はステージ中央のスタンドマイクのある場所に立つ。

「これより、第xx回、ディビジョンラップバトルを開始する。皆存じてはいるだろうが、優勝者には賞金と次回のバトルまでの支配権が与えられる。」

改めて告げられるその賞品を聞き、あたりからざわめきが漏れる。

「まず出場者には存分の力を発揮してもらいたい。もちろん各々全力を尽くして優勝をもぎ取るんだろうが...。」

そう言って冷たい目を客席からステージ袖に移す。

「ふむ、まあそういうことだ。精々頑張ってくれ。」

そう言い終わり、あたりから軽い拍手が起こる。

そして遂にバトルが...誰もがその展開を想像した。依早喜と希理奈さえも。

「さて、バトルを始める前に一つ皆に報告すべきことがある。」

“報告”。あまり聞き馴染みのないその重たい言葉に少しざわめきがどよめきへと変わる。

「なに、あまり対したことではない。では本人にも出てきてもらってしっかり説明をしよう。


楓舞！！」
「はい。」

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